寄生虫専門の研究博物館「目黒寄生虫館」(東京都目黒区)への注目が集まっている。新型コロナウイルス禍で来場者が減る中、ツイッターで寄付を呼びかける投稿が広がったり、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が来訪したりと、今夏、大きな出来事が重なったためだ。同館では、これを機に、一般になじみの薄い寄生虫の世界を広く知ってもらえればと期待している。

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米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏(AP)

 寄生虫館は、初代館長で内科医の 亀谷了かめがいさとる 氏が、寄生虫の研究と寄生虫病予防の教育・啓発のため、1953年に私財を投じて創設。国内外の約6万点の標本を所蔵している。

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目黒寄生虫館のサナダムシを紹介するゲイツ氏(ゲイツ氏のツイッターから)

 「教育や啓発にお金をいただいてはいけない」という初代館長の思想を守って見学は無料。同館を運営する財団の資産運用益や館内などで販売しているグッズからの収益、寄付金などを運営資金に充てている。

 しかし、コロナの感染拡大前は年間5万人以上だった来館者が2020年度は半数に減少。これに伴いグッズの購入者が減るなどし、20年度は600万円ほど収入が減少すると見込まれたことから、同年度から500万円を目標に寄付集めを始めた。同年度は目標を達成することができたが、21年度は450万円にとどまり、ホームページで支援を訴えていた。

 そんな中、生物関連のSNSで大きな影響力を持つ「インフルエンサー」が同館に注目。8月21日、ツイッターで「目黒寄生虫館に寄付を」と呼びかけたところ、3万件以上拡散され、寄付が急増した。今年度の寄付額はそれまで約200万円だったが、同月中に目標額の500万円を突破し、9月10日時点で600万円にまで伸びている。


 今年8月に、旭日大綬章の受章のため来日したゲイツ氏も、寄生虫館に関心を寄せる一人だ。ゲイツ氏は、慈善基金団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」を通じて世界の感染症対策に取り組んでおり、来日にあわせて寄生虫館に立ち寄ったという。

 来館中は、豚から人間に感染する寄生虫の展示に興味を示したほか、寄生虫の宿主となる淡水貝・ミヤイリガイのストラップとボールペンも購入した。

 ゲイツ氏は訪問後、ツイッターに「世界一長いとされるサナダムシを見た」などと投稿し、寄生虫館訪問を紹介。普段は1日1000件ほどだった同館ホームページへのアクセス数が2日後には約7000件にまで跳ね上がるなど、国内外で注目されるきっかけになった。

 倉持利明館長(66)は、「寄生虫館への注目を生かして、研究や教育・啓発、さらには来館者へのサービスに今まで以上に力を入れていく」と話している。

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