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Illustration ニャロメロン

「じつはこれは失礼な行為である」

「厳密にはこれも失礼に当たる」

 当失礼研究所は、そんなふうに重箱の隅をつついて「失礼」を作り出すために、研究を重ねているわけではありません。

 基本の失礼は押さえつつも、自分と周囲が日々を平和に穏やかに過ごすために、失礼とどう付き合っていけばいいかを考えていく所存です。

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 前回に続いて、3人の在日コリアン3世の話を聞きながら、日本人のひとりとして「自分に恥ずかしくない処し方」を考えてみましょう。

「混んだ電車の中で、前にいた30代ぐらいの女性のスマホがたまたま見えたんです。その人は、Yahoo!の韓国関連のニュースを見ながら、ヘイトなコメントに、次々と『そう思う』を押しまくっていました。ごく普通のおとなしそうな人が、韓国や韓国人にすごい勢いで悪意をぶつけている。あのときは震えるぐらいの恐怖を覚えましたね」(Cさん、30代女性、韓国籍)

 それ以来、人と話している最中、ふとした拍子に「この人も、韓国が嫌いなのかな」という思いがよぎるようになったとか。

「よく言われている『在日特権』は、ウソも100回言えばホントに聞こえるの典型で、もしそんなものがあるなら受けさせてほしいですよ。面と向かって『あるの?』と聞いてくる人は、まだいいんです。否定できますから。信じ込んでいる人に『こいつもきっと』と思われているかもしれないのが、すごく嫌です」(Aさん、40代男性、韓国籍)

 在日コリアンに関するデマを信じたがる人は、残念なことに少なくありません。「差別する口実がほしいんでしょうね」とAさん。なるほど、それはきっと図星です。

「いつの頃からか、飲み屋に行くとおじさんが、大声で韓国や韓国人を批判している場面に遭遇することが増えました。たいていは『お前のかあちゃんデベソ』みたいな幼稚な悪口だったりする。呆れるだけで腹も立たないし、デベソかどうかを議論する気はありません。でも居心地は悪いので、すぐに店を出ます」(Bさん、40代男性、日本国籍)

 そういうおじさんは、たしかによく見かけます。おじさんがどんな考えを持とうが勝手ですが、人前ですっかり油断して、特定の国や民族の悪口を言えてしまう世の中は、お世辞にも美しくはありません。

「在日」というレッテル
 凶悪犯罪が起きると、ネット上には必ず「こんなことは日本人にはできない」「日本国籍かどうか調べたほうがいい」など、暗に「犯人は在日コリアンに違いない」と言いたげなコメントが現われます。極めて失礼でみっともない光景です。しかも「濡れ衣」だとわかっても、謝っている人は見たことがありません。

「安倍元首相が殺害されたときも、直後はその手の声がたくさんありましたよね。もちろん、あの犯人はとんでもないヤツです。ただ、在日コリアンじゃなかったのは、正直言ってホッとしました。もしそうだったら、日本と韓国の関係は修復不可能になってしまいます」(Aさん)

 在日コリアン3世は、政治が作り出す世の中の激流に翻弄されたり、見えない悪意に恐怖を覚えたりせざるを得ません。名前や国籍をどうするか、己のアイデンティティーをどうとらえるかなど、悩みや葛藤を乗り越える必要もあります。

「私は、在日として生まれてよかったです。日本が好きだし、違う視点から日本や世界を見ることもできる。やはり差別には敏感になるので『自分は差別をしない人になろう』と思えますしね」(Cさん)