30代、女性信者の周りで起きていること
皮肉にも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)による記者会見がきっかけとなって、一部信者たちに教団との決別の動きが見られるようになっている。

現役信者の30代女性は、「平和を願う教義はいまも信じていますけど、教団への不信感が強くなった」と言い、彼女の属する信者グループでは「本部と独立したほうがいいのでは」と分裂を模索する声まであるという。

いまメディアや世間から強いバッシングを受けている教団だが、不信感を募らせたのは「マスコミや世間が理由ではなくて、教団自体。あの会見が教義にそぐわない」と、この女性は語る。

8月10日の会見、田中富広会長は「異常な宗教迫害とも言える偏向報道」と、批判される教団側こそが被害者であるかのような態度をとったが、これにメディアや世間からは「論点を逸らした」「苦しい言い訳」といった声が目立ち、結果的に逆効果だったと言えそうだ。

以降、批判が高まるなかで行なわれた9月22日の会見でも、教会改革推進本部の勅使河原秀行本部長は、同席の弁護士ともども、記者の質問に逆ギレした。

世間からの批判をかわすために動いたはずが、結局は多額の献金について「犯罪組織が騙し取っているような印象は正直腹立たしい内容」「霊感商法がいまでも行なわれているかのような報道、それを主導している左翼弁護士が日本国民をミスリードしている」といった自己正当化に終始した。批判の火に油を注ぐかたちで、結果として失敗だった。

これを見た前出女性信者は、「いままで持っていた教団本部へのイメージが崩れた」と語った。

「家庭連合は基本的に、愛や平和を理想としてきたのに、記者会見では攻撃性や怒りがあって驚きました。日頃の私たちの活動では見られない光景でした。というのも、他者に対して怒りを持ったとき、その感情がある間は人に対して返答すべきではないというのが家庭連合で教わってきたことなんです。

怒りがあったときは、心が落ち着くまで待ってから話すというのが私たちの模範行動です。怒りを持つほど、笑顔が消え、幸せが遠のいていくというのが教団の教えなのに、彼らはそれを実践できていません」

彼女の周囲では、「田中さんや勅使河原さんのほうがサタンに取りつかれているのか」なんて声もあったほどだというが、たしかに彼女の言うとおり、多くの信者は温厚姿勢が基本だ。

筆者が信者へのインタビューをした際にも、驚くほど穏やかな応答ばかりで、自民党の大物政治家と深く関係した支部に電話取材したときでさえ、回答した幹部男性は終始、柔らかい口調のまま、「先生(政治家)がこちらで礼拝していたのは事実なんですけどねえ」と丁寧に答えていた。少なくとも、田中会長や勅使河原本部長のようなマスコミを敵視した逆ギレ態度は一度もなかった。

過去のトラウマ
信仰期間の長い別の男性信者も一連の会見について、「私たちが一番やってはいけない態度だと思いました」と言った。その理由は、教団の長い歴史にまつわる反省があるからだという。

「私たちは過去、攻撃的な態度をとる一部の幹部により、分裂騒動を起こしています。いま田中会長たちがああいう姿勢を見せるのであれば、また離れていく家族(信者)がいると思います。それだけは避けるべきことでした」

男性が語ったのは、創始者の文鮮明が2012年に亡くなった後、教団内で分裂争いが繰り返し起きてきたことだった。

「簡単に説明しますと、第一にアダムの堕落から歴史が始まり、第二のアダムが新約聖書のイエス・キリスト、第三のアダムがお父様(文鮮明)という認識が連合にはあるのですが、彼の死後、第四のアダムをめぐって争いがあったのです。