南米チリにある世界遺産「イースター島」で山火事が発生し、モアイ像に深刻な被害が出ている。地元当局が「修復はできない」と明らかにするなか、救いを求めたのは、かつてイースター島のモアイを救った日本人だった。

■山火事で…モアイ像「黒焦げ」「石灰化」

 南太平洋に浮かぶ絶海の孤島、南米・チリのイースター島。この島と言えば、モアイ像だ。

 そのモアイ像に思わぬ事態が発生した。

 イースター島で山火事が起き、地元メディアによると、7日までに100ヘクタール以上が燃えたという。

 身動きの取れないモアイ像もこの火に包まれ、黒く焦げてしまったものや、白く「石灰化」したモアイ像もあった。

 チリ・イースター島 エドムンズ市長:「被害は計り知れません。解決策があるのか、どうか分かりません」

 予想以上の被害に、市長も困惑の様子だ。

 地元当局は、山火事による熱でモアイ像にヒビが入ったとしたうえで、修復ができないと明らかにした。

■“日本人”が助言「無駄なことしないで」

 そこで市長は、一縷(いちる)の望みをかけて、ある人物に救いを求めた。

 それが、数々の石造文化財の修復を担当してきた日本人・左野勝司さん(79)だ。

 左野さん:「(Q.(モアイ像は)修復できるものですか?)できますよ!」

 左野さんは、取材に力強く答えた。

 宮崎県にあるモアイ像を製作した人物で、1992年のチリのモアイ復元プロジェクトに参加し、3年がかりで15体のモアイ像を完全修復した。

 左野さん:「たまたま、それ(ニュース)を見たんですよね。僕らが修復をしている時の知事、ハコボ前知事から連絡を受けた」

 ハコボ前知事によると、今回の火災は観光客を受け入れるため、モアイ像周辺の草をいつものやり方で野焼きしたという。

 ところが、コロナ禍でいつも以上に草が伸びていたため、燃え広がってしまったのだという。

 左野さん:「少々の火が当たっても、僕はそんなに大きな支障はないんじゃないかと。ただ、焦げたようなところをたたいて取ろうとか、こすって取ろうとかすると問題がある。ですから、僕の指示しているのは、『無駄なことはしないほうがいい。黒い所を落とそうとか削ろうとか、そういうのを一切しない方がいい』と、今は指示してある」

 現時点で左野さんのもとには、正式な依頼は来ていないが、2週間ほど調査した結果、必要とあれば要請が来るという。

 左野さん:「それはまた修復可能なので、それはそれで考えましょう」

■修復に“世界遺産”ネック?…制約かかり

 被害を受けたモアイ像の修復は「可能だ」と自信を見せる左野さんだが、非常に丁寧な作業が求められるという。

 「モアイ像は、凝灰岩という岩の中でも、もろくて、壊れやすいもので造られている。さらに、作られて1000年経過していて、材質は限界を迎えているので、修復作業もきめ細かく行わないと、さらに被害が大きくなる懸念がある」という。

 また左野さんは、世界遺産であるがゆえの作業の遅れを心配している。

 「世界遺産となったことで、修復を行うにしても、様々な計画書をユネスコに送って許可をもらわなければならず、ものすごく制約がかかるようになった」という。

 「モアイ像の修復に遅れが出ることで、観光客数がなかなか増えてこないのでは」と心配している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2022年10月10日放送分より)

https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000271302.html