消費者庁は14日、「日本アムウェイ合同会社」(東京都渋谷区)に対し、連鎖販売取引(マルチ商法)について社名や目的を言わずに勧誘したことなどが特定商取引法違反に当たるとして、6カ月の取引停止命令と、再発防止策を講じることなどを求める「指示処分」を出した。同社への行政処分は初めて。

 同庁によると、社名や目的を言わずに勧誘した▽目的を告げずに誘った相手を自宅や事務所に連れ込んで勧誘した▽相手の意向を無視して一方的に勧誘した▽契約締結前に書面を交付しなかった――という4種類の違反を確認したという。

 同社は、会員が勧誘により別の会員を増やすことで報酬を得るネットワークビジネスが主事業。同社のホームページによると、1979年5月の創業で資本金は50億円。2021年6月時点で373人の従業員を抱えている。日用品から健康食品など幅広いジャンルを取り扱い、21年の売上高は984億5700万円に上った。

 同庁によると、全国の消費生活センターに寄せられたアムウェイに関する苦情相談件数は、19年度317件▽20年度257件▽21年度270件▽22年度(9月15日時点)109件。【藤沢美由紀】

事業継続の意欲示すメールを会員に

 「消費者庁より、数件の特商法違反行為を問われる事態となり、新規勧誘の取引等停止の命令とともに更なる改善努力を指示されています」。消費者庁が行政処分を公表する前、業界大手のマルチ業者「日本アムウェイ合同会社」(東京都渋谷区)が会員に送った文書の一部。「弊社はいかなる違法行為も許しません」などとも記し、事業継続への意欲がみてとれる。

 同社には従業員の他に、ABO(アムウェイビジネスオーナー)と呼ばれる販売を担う会員がいる。同社のホームページによると、ABOは約69万組に上るとされ、会員価格で仕入れた製品を知人や友人に販売しているという。販売価格と会員価格の価格差が会員の利益になるという仕組みで、売れば売るほど報酬が増える。

 新規会員獲得などの成果に応じたボーナスも設定されている。20段階程度の「ピン・レベル」と呼ばれる階層があり、上位になるほどそれに応じた特典が得られる。同社は「努力に応じた報酬制度」とうたい、「経験や性別、学歴などに左右されることなく、機会は平等に提供されます」などと紹介していた。

 一方で、商品を売るため強引な勧誘などが問題となっていた。昨年11月には、マッチングアプリで知り合った女性を同社に会員登録するという目的を告げずにエステに連れ出し勧誘したとして、特定商取引法違反容疑でABO2人が京都府警に逮捕される事件も起きている。同社への勧誘を巡り、同法違反で立件されたのは全国で初めてとみられ、警察や行政機関は監視を強めている。

 ABOの中には、主に商品の取引で生計を立てている人もいるとみられ、6カ月の取引停止命令が下れば、生活に困窮するケースも出かねない。違法なマルチ商法が名前を変えるなどして潜伏し、新たなマルチ商法の被害を生まないためにもしっかりとした監視が引き続き必要だ。【小鍜冶孝志】

https://mainichi.jp/articles/20221014/k00/00m/040/144000c