国連経済社会理事会で特殊諮問資格を持つ欧州の非政府組織「良心の自由のための団体と個人の連携(CAP―LC)」は4日、日本で安倍晋三元首相銃撃事件を機に起きている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)信者への人権侵害に関し、国連自由権規約人権委員会に3度目の報告書を提出した。今回の報告書は「魔女狩りと不寛容のスパイラルを止めるには国際的な介入しかない。委員会側の介入は以前にも増して緊急性を帯びている」と主張し、国連が緊急対応をしなければ、深刻な宗教迫害へと発展すると警告している。(世界日報特別取材班)

旧統一教会叩き「国際法に違反」国連NGO 深刻な宗教迫害問題視

国連自由権規約人権委員会は、日本が批准する「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」の実施を監督する国連機関。CAP―LCは9月と10月にも報告書を提出して対応を求めてきたが、「日本の状況は悪化を続けている」とし、3度目の報告書提出に踏み切った。CAP―LCはパリを拠点に信教・良心の自由擁護、特に少数派宗教が直面する差別解消に長年取り組んできた国際NGOだ。

3度目の報告書は、日本における過剰な旧統一教会叩(たた)きは、「不寛容」から「差別」、さらには「迫害」へと進む「3段階の危険な坂道」を転げ落ちていると警告。日本を全体主義体制と比較することはできないとしながらも、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害は、この3段階を経てアウシュビッツ強制収容所の虐殺に至ったことを挙げ、日本の状況に深刻な懸念を表明した。

岸田政権が宗教法人法に基づく質問権の行使を決定し、解散命令請求に向けた手続きを進めていることについて、報告書は「いかなる犯罪でも有罪になっていない宗教団体を解散請求を視野に調査することは、日本の法制史上前例がなく、宗教・信念の自由に関する自由権規約の日本の義務に反する」と批判。自由権規約第14条は推定無罪の原則を定めているが、「家庭連合への敵対的な扱いと政治家の態度から、家庭連合は公正な扱いとその弁護に対する真摯な考慮がほとんど期待できない」とし、「家庭連合はプロセスの最初の段階から有罪と推定されている」と非難した。

自民党が所属国会議員に対し、教団との関係遮断を指示する文書を配布したことについては、「結社の自由に関する自由権規約第22条および政治参加の権利に関する同25条のあからさまな違反だ」と断言。「宗教上の理由だけで、最大政党の政治活動に自由に参加できない二級国民のカテゴリーが生みだされている」と強い懸念を表明した。