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プーチンの後継と目されるワグネル創設者プリゴジンが元囚人たちを野に放つ?(写真はFBIの手配書)FBI/REUTERS

<プーチンの側近プリゴジンが創設した民間軍事会社ワグネルが刑務所で囚人を動員していることは知られていたが、あるマフィアのボスは、それがいずれギャングとしてロシア社会に放たれることになると警告する>

あるロシアマフィアのボスが、ロシアの民間軍事会社ワグネル・グループがウクライナ戦争のために囚人を採用している件について、市民に警告した。彼らはいずれ社会に大混乱をもたらし、ロシアの「権力構造が一変」するというのだ。

グリシャ・モシュコフスキーは11月、ソーシャルメディアで拡散した動画の中で、ウラジーミル・プーチンの側近で後継とも目されるワグネル・グループの創設者、エフゲニー・プリゴジンと、チェチェンの首長ラムザン・カディロフを名指しし、2つの権力グループができつつあると発言。ロシア市民に警戒を呼び掛けた。

「ロシアでは今、2つのギャングが結成されている。一つはワグネルのギャング、もう一つはカディロフのギャングだ。権力構造が一変しようとしている」とモシュコフスキーは述べている。「この状況は、ロシアとロシア人のためにならない」

腹を空かせた奴らは危険
モシュコフスキーは、ワグネル・グループがウクライナ戦争のために大量の囚人を採用している事実を指摘した。囚人擁護団体ロシア・ビハインド・バーズ(Russia Behind Bars)を率いるオルガ・ロマノヴァによれば、ワグネル・グループは、ロシアの遠隔地にある流刑地で兵士を採用してきた。

またロシアの調査報道機関インポータント・ストーリーズは最近、サンクトペテルブルクの囚人が、ウクライナ戦争に参加すれば自由と金を得られるという勧誘を受けていると報じた。

サンクトペテルブルクで服役している囚人の親族たちはインポータント・ストーリーズに対し、ウクライナのドンバス地方で6カ月の兵役に「志願」し、生きて帰ればワグネル・グループから20万ルーブル(約45万6000円)と恩赦を与えられると語っている。

「ワグネルの兵士がどういう者たちなのか、想像してみてほしい。20歳、15歳、18歳、19歳の元囚人で、レイプや殺人、あらゆる暴力犯罪に関わってきた」とモシュコフスキーは話す。「彼らが自由の身になり、食べたい、稼ぎたい、良い気分になりたいと思っている。そのとき、彼らは誰のところに行くだろう? ロシアの一般市民である皆さんのところに行くはずだ」

一方で、カディロフとプリゴジンは、ともにプーチンの戦い方を批判している。プーチンへの異議は珍しく、そうした異議を唱える互いを支持しあっているようだ。これは、政権内部に亀裂が生じている可能性を示唆している。

米国のシンクタンク戦争研究所(ISW)も10月、プリゴジンとその軍事組織が、「プーチンの支配に脅威を与える」可能性があると評価している。

モシュコフスキーはロシア市民に対し、プリゴジンとカディロフのどちらにも権力を握らせないよう、声を上げてほしいと呼び掛けている。

「皆さんが黙っている間に、ロシアはどんどん悪い状況になる。どうか一般市民のために、街頭に繰り出し、彼らが権力を握らないようにしてほしい。もし彼らが権力を握れば、ロシア全土が混乱に陥るだろう」

モシュコフスキーはさらに続ける。「ワグネル陣営も、カディロフ陣営も、失うものは何もない」

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