1/7(土) 18:30   産経新聞
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岸田文雄首相は安倍晋三元首相の死去から半年間、「安倍路線」の継承と脱却のバランスに苦慮しつつ、独自色の打ち出しを進めてきた。昨年末には安倍氏から引き継いだ防衛力強化のため、令和5年度からの5年間で43兆円を確保する方針を決定する一方、財源論では安倍氏が生前、提唱した国債発行を否定した。政権の安定に向け、党内の不満を抑えられるかが焦点となる。

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「ミサイルを買うために、国債をばんばん発行するというのは違うんじゃないか」。昨年12月、防衛費増額のための増税方針に関し、自民の安倍派(清和政策研究会)を中心に反発の声が相次いだことについて、首相は周囲にこう漏らした。防衛力強化の方針では一致しながらも、財政規律に目配りする首相と、防衛国債に言及した安倍氏の遺志を尊重する議員らとの乖離(かいり)が表面化した形だ。

昨年7月の安倍氏の死去直後、首相は憲法改正や北朝鮮による日本人拉致問題への取り組みなど「安倍路線」の継承を打ち出した。最大派閥の安倍派の支持をつなぎ留めなければ政権運営が安定しないからだ。

厳しい党運営を強いられる首相だが、「岸田カラー」へのシフトは徐々に進めている。象徴的なのが経済政策だ。今年1月4日の年頭会見では「この30年間、企業収益が伸びても期待されたほど賃金は伸びず、トリクルダウン(経済活性化による利益の再分配)は起きなかった」と安倍氏が進めたアベノミクスを含む施策を総括。その上で「この問題に終止符を打ち、賃金が毎年伸びる構造をつくる」と訴えた。

焦点となるのは4月8日に任期満了を迎える日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の後任人事だ。安倍派内では大規模金融緩和の継続を求める声が根強いが、政権内では市場から金融緩和の弊害が指摘されていることを踏まえ、「機動的かつ柔軟にやるべきだ」との意見がある。

ただ、首相が後任人事で「脱アベノミクス」を鮮明に打ち出せば、安倍派などの不満が高まり、政権運営が不安定化する恐れもある。