ADHD・ASDの人たちが「病」であるならば、そうでない定型発達の人にも実は「健常」でない側面があるのではないか。

そして、「健常発達」の人が人生の中で求めるものは、例えば統合失調症の人が志向し、それをきっかけに発症するようなものとなんら変わりはないのではないか──。

精神科医の兼本浩祐氏はそう考え、統合失調症を発症したある英語教師の事例について分析している。『普通という異常 健常発達という病』から再編集・抜粋して紹介する。

「生活臨床」——生活破綻のきっかけ
対人希求性(人を求める気持ち)が健常発達の心性にどう重要なのか、そのところをもう少し明確にするために、「生活臨床」という名前で呼ばれていた精神科のムーブメントのことに触れたいと思います。「生活臨床」というムーブメントは、具体的にこの対人希求性が実生活の中でどのような形をとるのかに集中的に焦点を当てているからです。

少しばかり乱暴で通俗的なまとめ方をしますが、生活臨床というのは、「色、金、名誉」のいずれかのキーワードに、統合失調症の発病のきっかけがあるという認識のもとおこなわれた運動です。

つづき
https://gendai.media/articles/-/104543