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「黄金バット 大正髑髏奇譚」第1話扉絵=脚本・神楽坂淳、漫画・山根和俊 (C)黄金バット企画/ADK

 昭和の子どもたちを魅了した懐かしのヒーロー「黄金バット」をモチーフとした新作「黄金バット 大正髑髏奇譚」が昨年12月、月刊チャンピオンRED(秋田書店)で連載を開始した。大正時代の帝都・東京を舞台に、帝国陸軍の主人公・月城竜史が、金色に輝く髑髏の超人とともに〝邪神〟ナゾーとの戦いに挑む。「スーパーマン」に8年先立ち、1930年に日本で誕生した世界最古級のスーパーヒーロー。その令和版に寄せる熱意を、担当編集者に聞いた。

 同誌では「宇宙海賊キャプテンハーロック」「聖闘士星矢」「サイボーグ009」「エコエコアザラク」などの名作を題材に、新たな解釈を加えた新作を多く掲載。担当者は「広く世の中に知られたキャラクターを新たにアレンジして発表し、それを広く世界に伝えていくという事に面白味を感じるとともに、マンガに携わる者として使命感のようなものを持っております。日本が生みだし世界中で愛されるスーパーキャラクターたちに関われる喜びは、編集者としてひとしおです」と語った。

 令和版「黄金バット」誕生のきっかけは、2020年から連載が続く人気キャラクターのコラボ作品「8マンvsサイボーグ009」だった。「8マン」を原作とするアニメ「エイトマン」を制作したエイケンとの関係を通して、1967年のアニメ「黄金バット」を管理するADKの担当者と接触。作家の神楽坂淳氏がコミカライズに意欲を示したことで、具体的な進展がスタート。小説「大正野球娘。」など歴史物を得意とする神楽坂氏が脚本を担当し、パワフルさに定評がある山根和俊氏が作画を担当することになった。

 「黄金バット」は昭和初期に街頭で子供たちを沸かせた紙芝居から生まれたヒーローで、著作権者は故・永松健夫。現在は一人娘の谷口陽子さんが、作品を管理しており「新作はとても迫力があり、物語の展開が楽しみです。49才という若さで世を去った父が生み出した黄金バットは、何かが人々の心に残るヒーローだったのでしょう。今回、多くの方々の試行錯誤によって再び甦ることができ、父もきっと喜んで応援してくれていると思います」と、感慨を口にした。

 谷口さんによると、生前の永松氏は読書に専念する「読書の日」を設け、美術館や博物館にも度々足を運び、長谷川等伯と雪舟がお気に入りで、娘の遠足などにも付き添い、洋服も永松氏が選ぶなど、優しく芸術家肌だった。新連載がスタートした同誌の発売日は、永松氏の孫・朋子さんの誕生日という偶然にも、何かの縁を感じているという。なお、令和版ではアニメ版「黄金バット」のスピンオフとして権利処理が行われた。

 スピンオフ作品では、新しい読者層の開拓とともに、旧作ファンへの配慮が必須となる。担当編集者は「注意しているのは、まずは原作を愛している方に楽しんでもらえるかです。そうでなければスピンオフ作品をする意味がありません。原作へのリスペクトを第一に物語を考えていきます。その上で、それを知らない方にどう広げていくのか、という事を考えています」と語った。

 黄金バットのデザインは時代によって異なるが、幾度も再放送されたアニメ版を中心に、金色のドクロの顔、マント、蝙蝠、独特の笑い声を軸とすることに決定。「キャラクターものでまず重要なのは、物語がなくてもその存在自体で世界観が見えてくることかと思います。そういう意味で『黄金バット』は大変キャッチーですし、オシャレさもあります。また、『黄金バット=強い』というイメージを強調する意味で、マッチョな肉体を見せるようにしています。作画の山根和俊先生がこれまでの「黄金バット」のビジュアルからイメージを膨らまし、そこに先生本来の力強い画風を加味して再創造していただきました」と説明した。