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衆院予算委員会で質問する立憲民主党の本庄知史氏=13日午後、国会内

 安倍晋三元首相の生前のインタビューを中心に構成した「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)が波紋を広げている。安倍氏が在任中の多くの「秘話」を明かしているためで、13日の衆院予算委員会では立憲民主党がこれに基づいて政府を追及した。

 回顧録は2020年9月の退任後、安倍氏が読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏らと行った18回計36時間のインタビューを収録している。

 立民の本庄知史氏は、安倍氏が「民主党政権の間違いで決定的なのは東日本大震災後の増税だ」と語ったことを取り上げ、「復興増税は間違いか」と追及。復興増税の防衛財源への一部転用方針を決めている鈴木俊一財務相は「(旧民主党政権の)判断は正しかった」と釈明に追われた。

 もっとも、閣僚が正面から答えたのはこの質問ぐらいで、はぐらかす答弁が目立った。立民の米山隆一氏が「財務省は意向に従わない政権を平気で倒しに来る」(安倍氏)との認識は正しいかをただしたのに対し、鈴木氏は「安倍氏の心を推察することはもう限界がある」とかわした。

 回顧録には、北方領土交渉に関し「(2018年は)日ロが最も近づいた時だった。本当に2島返還の合意に向けたチャンスだった」と交渉方針を四島返還から2島返還に転換したことをうかがわせる安倍氏の言葉が収録されている。

 本庄氏は「交渉を(日ソ共同宣言を結んだ)1956年に戻し、後世の日本外交に深刻な影響を残した」と「安倍外交」の総括を求めたが、林芳正外相は「安倍氏が述べたとされる事柄についてはコメントを差し控えたい」と繰り返した。

 本庄氏は18年当時の外相だった河野太郎デジタル相にも質問。慰安婦問題に関し1993年に当時の河野洋平官房長官が発表した談話を巡り、安倍氏が河野氏に「お父さんと全く違う立場でやってくれ。河野談話の『こ』の字も言うな」と指示したと振り返ったことと合わせ、事実関係をただした。しかし、河野氏は12回、「所管外だ」を連発した。

 本庄氏は、安倍氏が守秘義務に違反しているのではないかとも迫った。松野博一官房長官は「大臣規範の『職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない』との規定に反するかどうかは各大臣が自ら適切に判断すべきものだ」と述べるにとどめた。

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