亡くなった妻の携帯電話にかかってきた電話は特殊詐欺だった-。兵庫県西脇市で2月7日午後2時過ぎ、80代の高齢男性宅の携帯電話に着信があった。ピンク色で女性向けの携帯は1年ほど前に死別した妻が使っていたもの。解約せず形見として大切に保管していた電話が突然、鳴り響いた。

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奥村寛署長から感謝状を受け取るJAみのり西脇ケアセンターの蛭田綾子さん=西脇市郷瀬町

 男性が電話に出ると、電話先の男は通信会社の社員を名乗り「携帯電話料金の未払いがあり、支払わなければ裁判になる」などとして、現金49万円の振り込みを求めた。

 「料金は払っているはずなのに」。焦った男性はATMを求め、電話をつないだまま自宅近くの「JAみのり西脇ケアセンター」(同市日野町)へ。店内に入ると、訪問介護などに従事する女性職員3人が男性の様子に違和感を抱いた。

 男性への聞き取りを他の職員に任せ、センター責任者の蛭田綾子さん(54)が応対すると、電話口の男は「さっきの人に代わってください」と繰り返した。蛭田さんは「男性の名前を言わないのはおかしい」と不審に思い、電話を切って西脇署へ通報した。

 一連の対応が特殊詐欺被害を未然に防いだとし、西脇署は21日、同センターに署長感謝状を贈呈した。奥村寛署長は「ATMの場所を問われ、『そこにあります』で終わらせなかった対応は見事」と称賛。蛭田さんは「奥さんの携帯を大事にしていた男性が気の毒。足が震えたが、被害を防げてよかった」と安堵の表情で振り返った。

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