3/4(土) 9:06   日刊ゲンダイデジタル
https://news.yahoo.co.jp/articles/5eaaf263331c4baaed84116139eb4b71c173022f

日銀総裁候補の国会同意人事案の採決まで1週間となる中、アベノミクスの立役者である黒田総裁に対する痛烈な批判が話題だ。10年に及ぶ異次元緩和は国際競争力を低下させ、足元の輸入物価高を招いている。酷評されて当然なのだが、発言の主が言葉を選んできた白川方明前総裁だからインパクトは絶大だ。


 白川氏はIMF(国際通貨基金)の季刊誌に「変化の時(Time for Change)」と題して寄稿。金融政策の新たな方向性に関する3ページの論文で、IMFのHPで1日に配信された。安倍政権と一体化した黒田氏が推し進めた異次元緩和を「壮大な金融実験」「ややナイーブな前提があった」などとクサし、こう批評している。

■異次元緩和は「おばかさん」

〈2013年以降、日本銀行のバランスシートがGDP比30%から120%に拡大した「壮大な金融実験」を改めて振り返る。インフレの面ではその影響は控えめだった。そして、成長面でもその効果は控えめだった〉

〈中央銀行が政策金利の動向を市場に強く示唆し、長期金利に影響を与える「フォワードガイダンス」。経済が低迷しているときは、市場参加者は低金利が続くと予想しているので、フォワードガイダンスはあまり効果的でない〉

〈(異次元緩和は)必要なときに簡単に解除できるという、ややナイーブな前提があった〉

 財務省出身の黒田氏が導入したフォワードガイダンス(先行き指針)などの非伝統的な金融政策は意味ナシ。インフレも成長も促せなかった「実験」は失敗だったと総括したのである。ちなみに、「ナイーブ」には「おばかさん」の意味がある。

黒田氏の認識の甘さを一刀両断
「壮大な金融実験」は失敗。インフレも成長も促せなかった(C)共同通信社
https://news.yahoo.co.jp/articles/5eaaf263331c4baaed84116139eb4b71c173022f/images/001

 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。

「黒田氏は金融政策の限界に対する認識が甘かった。白川氏の指摘をひと言で言い表せばそういうことで、実際にその通りだと思います。過剰な思い込みにより、当初掲げた『2年で物価上昇率2%』に固執し、これでもかと黒田バズーカをぶっぱなした結果、日銀のバランスシートは膨れ上がり、利上げすれば債務超過必至。日本経済はメチャクチャになった。とんでもない事態に日銀OBとして怒りが収まらないのでしょう」

 黒田体制ラストの金融政策決定会合は9、10日。事実上の利上げに再び踏み込むのか。プライドの高い黒田氏が白川氏の苦言にどう反応するのかも注目だ。

「黒田総裁は自分の仕事は終えたとの認識で、現状維持で退任するつもりのようです」(金融関係者)

 無傷でトンズラされたら、白川氏でなくても怒りは収まらない。