3/20(月) 18:43     毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/181355880bdd716da1a9a4c6ec775303ea66c4b1

 インドを訪問中の岸田文雄首相は20日、インド外務省で政策スピーチに臨み、法の支配などを重視する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の新たな推進計画を発表した。「グローバルサウス」と呼ばれる途上国・新興国が多くを占めるインド太平洋地域のインフラ支援として、2030年までに官民で750億ドル(約9兆8000億円)以上の資金を投入すると表明した。


 岸田首相はスピーチで、新型コロナウイルスの流行やロシアのウクライナ侵攻などにより「歴史的な転換期」にある国際社会が「分断と対立に向かいかねない」と指摘。課題が山積する中で「脆弱(ぜいじゃく)な国家ほど大きな犠牲を払い、翻弄(ほんろう)されている」と述べ、インド太平洋地域を力や威圧とは無縁で、自由・法の支配を重んじる場にすべきだと訴えた。

 その上で首相は「各国の歴史的・文化的多様性を尊重した対話によるルール作り」などに取り組むべきだと主張。FOIPを巡る新たな協力として@主権・領土の一体性の尊重など「平和の原則と繁栄のルール」の堅持A気候変動や国際保健など幅広い分野の課題への対処B東南アジア、南アジア、太平洋島しょ国を含む地域全体の成長C海から空へ広がる安全保障・安全利用の取り組み――の4本柱を挙げた。

 協力の具体策としては、政府開発援助(ODA)の拡充や、国際秩序を重視する国の軍隊に装備品などを提供する新たな仕組みの活用、東南アジア諸国連合(ASEAN)を対象にした「日ASEAN統合基金」への1億ドル(約131億円)の追加拠出などを列挙した。また、ロシアのウクライナ侵攻について「強く非難し、決して認めることはない」とも発言した。

 FOIPは07年、当時の安倍晋三首相がインド国会で太平洋とインド洋を結び付けるネットワークの構築を訴えた「二つの海の交わり」と題するスピーチが起点となった。岸田首相は安倍氏の演説に触れて「インドはFOIPの始まりの地だ」とし「日印は『法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序』を維持、強化する大きな責任を負っている」と連携を呼びかけた。