3/28(火) 17:01    集英社オンライン
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安倍晋三元首相暗殺を機に、統一教会が自民党に深く食い込んでいる実態が明らかになった。すでにこの問題の報道は下火になっているが、宗教社会学者・橋爪大三郎著『日本のカルトと自民党』では、カルトの正体を見極め、もう一度原点に立ち返って政治と宗教の関係を考え直すべきだと説く。数十年にわたって統一教会をはじめカルトの実態を取材し続けてきたジャーナリスト・有田芳生氏と橋爪氏との対談をお届けする。

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日本に欠けているカルト教育
有田 橋爪先生とお会いするのは28年ぶりです。1995年3月20日に地下鉄サリン事件が起きて、日本の報道はオウム事件一色になりましたが、そのテレビの仕事で橋爪先生と一度だけ同席する機会がありました。私のように現場をドタバタ回っている人間から見ると、蓄積された学問に基づいての事件分析は非常に印象深かった記憶があります。

橋爪 前回も今回も大きな事件があって、お会いすることがいいのか悪いのか(笑)。でもお話を聞けるチャンスを心待ちにしておりました。

有田 今度の本は、生長の家、日本会議、統一教会についての分析だと伺っていましたが、実はゲラを読んでびっくりいたしました。序論で書かれた「カルト原論」、この内容が素晴らしかった。カルトとは何か、なぜ危険なのか、それが歴史的な検証を含めて非常にわかりやすい文章で端的にまとめられている。31年前の桜田淳子さんなどが参加した合同結婚式のときの統一教会の報道、そして28年前の地下鉄サリン事件の報道、そこから日本の社会は何を学んだのかと今でも強く疑問に思っているんです。オウム事件を機にフランスでは、2001年に反セクト法というカルト問題に対処する法律ができました。それをきっかけにフランスは中学生レベルからカルト教育を学ぶ社会になっていったと思います。

ところが、日本は今もそれがないままに来ている。じゃあ、具体的に日本でのカルト教育にはどういうテキストが必要だろうかと考えたときに、橋爪先生の今回のカルト原論を読んでまさにこれだと思いました。カルトというものをわかりやすく国民に知らしめる。特に若い人たちに知ってもらう。こういう本は私が知る限り皆無に等しかった。この内容こそ中学生レベルから学ばなければいけない。そのためにも学校、図書館、そして各家庭にもぜひ普及してもらって、多くの人に読んでほしいというのが、私の率直な感想です。そのくらい衝撃的でした。

橋爪 大変意義深く受け止めていただいて感謝です。宗教絡みの事件が起きると、日本人はみんな首をすくめてしまうんです。巻き込まれずに通り過ぎればいいやと。なぜかといえば、しっかり信仰を持って、信仰を選んでいる人が少ないからです。宗教と距離を置いて、最初からうさんくさいものだと思っている。これはこれで問題です。事件を起こした宗教とそうでない宗教をきちんと区別して、問題をピックアップするべきなのに、宗教だからいけないという結論で、いい大人が思考停止になってしまう。それは日本のためにも困ったことだし、本人のためにもならない。 

それでわかりやすくウイルスに譬えた。ウイルスはどこにでもいて根絶はできないが、その中に伝染性が高く害毒をもたらすウイルスがいる。それがカルトである。その悪さをする部分を何とかすればいい。ワクチンもあるし、いろいろな対処法がある。宗教も同じだということです。

有田 はい。しかし日本の場合、ワクチンどころか何も対処策が講じられていない。オウム事件をきっかけに、確かに宗教法人法の一部は改正されましたが、創価学会をはじめ既成の宗教団体の強い反発にあって、結果的に新しい法律的な進展はほとんどなかった。今回も、統一教会問題で、昨年末に被害者救済法という新しい法律ができましたが、やはり創価学会の方々の反発もあって、ほとんど効果のない中途半端なものになっています。

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