「毎週開催ってサルのやることだ」――憲法を議論する国会の憲法審査会をめぐり、こう発言し、批判を浴びていた小西洋之参院議員が3月31日、参院憲法審査会の野党筆頭幹事から外された。総務省の放送法をめぐる文書で高市早苗経済安全保障担当相を追い詰めていた小西氏だったが、永田町関係者からは「サル発言は、いかにもコニタンらしい」と納得の声も。永田町界隈での「コニタン」のこれまでの言動とは。

「サル解散なんて嫌だ」立憲に広がる失望の声
「『サル』『蛮族』という発言はまかりならん。事実上の更迭とみていただいて、かまわない」。立憲民主党の泉健太代表は3月31日の記者会見で、憲法審査会を毎週開催することを「サルのやること」などと発言した小西洋之参院議員を、参院憲法審査会の野党筆頭幹事から外すことを発表した。

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小西ひろゆき議員(ツイッターより)

問題となっていたのは、野党を代表して与党側と憲法審の開催をめぐる調整にあたる役割だった小西氏が29日、記者団の前で放った言葉だ。小西氏は憲法審について「毎週開催はやりたくない。毎週開催ってサルのやることだ」と発言。週1回開催している衆院憲法審についても「何も考えていない人たち。蛮族の行為だ」とも非難した。

政治部記者が解説する。

「小西氏は後から『オフレコの場だと理解していた』『その場で撤回した』と釈明していますが、オフレコだとしても『サル』『蛮族』は差別発言と言っていいでしょう。そもそも、記者たちが小西氏に見える形でICレコーダーを出していたのですから、発言者の実名を出して報道していい『オンレコ』取材だというのは、永田町の常識です」

憲法改正議論に積極的な自民や維新だけでなく、党内からも「不快だ」(中川正春憲法調査会長)と反発の声が出て、小西氏の更迭はすばやく決まった。

折しも、「3月31日解散」が取りざたされるなど「解散風」が吹いている中での失言に、立憲内からは失望の声が漏れる。

「また立憲に悪いイメージがついた。自民が勢いづいて『サル解散』なんて嫌だよ。コニタンの地元の千葉県では衆院補選も控えているのに、逆風が吹いちゃう」(立憲から衆院選に出馬予定の前衆院議員)

「国会のクイズ王」として有名に。
飲み会でもクイズ出題でご満悦
「サル」発言の小西氏とはどのような人物なのか、政治部記者が語る。

「東大出身で、旧郵政省を経て、政界入りしました。官僚時代は放送行政に携わり、先日は、独自に入手した総務省の内部文書から、放送法の『政治的公平』をめぐる解釈変更が、安倍政権時代の官邸の強引な主導によるものだったことを明らかにしました。小西氏はこの文書を1年ほど前には手に入れていたそうで、丹念に分析、裏付けをしていたことがうかがえます」


立憲民主党の小西洋之参院議員が安倍政権当時の総務省作成として公表した、放送法の「政治的公平」に関する内部文書

立憲のベテランも、小西氏を評価する。

「検察官の定年を延長する検察庁法改正案が『権力にとって都合のいい検察幹部のみを恣意的に幹部として残せるようになる』と批判され、世論が盛り上がっていたときも、小西氏は過去の政府答弁との矛盾をつくなど、元官僚の嗅覚と調査力を武器に、活躍していました」

一方で、こうも指摘する。

「それだけに、自分が一番頭のいい人間だと思っているようで、自分の得意分野になると、周囲を気にかけず、暴走しがち。『サル』発言も、いかにも周りを見下すコニタンらしい」

小西氏の仕事ぶりでよく知られているのが、細かいクイズのような国会質問だ。2013年の予算委員会では、「憲法において包括的な人権保障、包括的な人権規定と言われる条文は何条ですか」と安倍晋三首相(当時)に「出題」。

安倍氏が「今そういうクイズのような質問をされても、暫定予算を議論をしているわけでありますから、あまり生産性はないんじゃないですか。そういうのを聞くんだったら、私に聞かなくても、調べればいいじゃないですか」とあきれながら応じると、小西氏は「私は知っています。今総理が答えられなかったことは、大学で憲法学を学ぶ学生が一学期でみんな知っていることですよ」とたたみかけた。