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https://news.yahoo.co.jp/articles/633c613ac55b9dc84375bd515814c772db95072b

(舛添 要一:国際政治学者)

 最近は日本の衰退を示すニュースが多く、うんざりするが、事実なので仕方がない。なぜこうなったのか。

■ 日本の生産性が低下

 三菱重工業が国産ジェット旅客機の開発を断念した。またH3ロケットの打ち上げも失敗した。ものづくりが得意な日本の凋落を物語るエピソードである。

 「一人当たり名目GDP」では、まだ日本が韓国よりも上だが、「一人当たり購買力平価GDP」では2019年には韓国に追い抜かれている。しかし、前者の数字も、IMFの2022年10月の推計によると、2022年には日本が3万4358ドル、韓国が3万3591ドルと僅差であり、韓国に追い抜かれるのは時間の問題である。

 そうなったのは、日本の生産性が伸びていないからである。日本の労働生産性はG7で最低なのである。

 日本生産性本部の『労働生産性の国際比較2022』によると、日本の(1)時間当たり労働生産性は49.9ドルで、OECD加盟38カ国中27位、(2)一人当たり労働生産性は81,510ドルで、OECD加盟38カ国中29位、(3)製造業の労働生産性は92,993ドルで、OECD主要35加盟国中18位である。

 スイスのビジネススクールIMDの「2022年世界競争力ランキング」によると、日本は前年から順位を3つ下げ、34位と過去最低になった。10位までの順位は、(1)デンマーク、(2)スイス、(3)シンガポール、(4)スウェーデン、(5)香港、(6)オランダ、(7)台湾、(8)フィンランド、(9)ノルウェー、(10)アメリカである。中国は17位、韓国は27位である。中国や韓国にも及ばない日本の惨状である。

 日銀は植田和男新総裁を迎え、黒田東彦総裁下での金融緩和政策をどう変えていくのかに注目が集まっているが、25年間続いてきたデフレの副作用もまた大きい。今は、ウクライナ戦争の影響で物価高という問題が生じているが、活力が感じられない日本となりつつある。

■ 劣化する知性の代表、三浦瑠麗

 日本の活力低下は、企業の生産性が伸びないことのみによるのではない。あまり指摘されていないが、大衆を指導すべき知識人のレベルの低さも一つの要因になっている。

 テレビ番組も、かつて大宅壮一が喝破したような「一億総白痴化」現象が拡大している。知の退化、つまり、知を担う知識人の劣化が甚だしいのだ。

 その象徴が、今話題になっている三浦瑠麗である。この人のテレビ番組での発言を聞いても、「国際政治学者」という売り込みなのに、国際政治に関わるテーマについて彼女が的確な解説をしているところを見たことがない。たとえば、習近平政権3期目の発足についての発言など、習近平賛歌ともとれる内容で、まともな中国専門家から顰蹙を買っている。

 私は、1989年に東大を辞してから、『朝まで生テレビ!』、『TVタックル』など多数のテレビ番組に出演したが、それ以来、肩書きに「国際政治学者」を使ってきた。学者、研究者としての矜持があったので、「評論家」という肩書きが嫌だったからである。

 しかし、三浦がこの肩書きを使うようになって、まるで自分まで彼女と同類項であるかのように見なされるのには閉口している。実は、この肩書きを広めたのは私である。