「山梨県内で行う調査ボーリングが『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水を山梨県内に流出させる」と、超自然現象の“珍説”を唱えた川勝平太知事は2023年3月28日の会見で、ようやく「サイフォンの原理は間違っていた」と誤りを認めた。その席で、「サイフォンの原理」に代わる静岡県内の地下水流出の新たな理由を説明した。ところが、こちらも「真っ赤な嘘」だった。

現代ビジネスの記事(「命より水」を貫き通す川勝知事の「傲慢」…静岡県のリニア議論がどうにもやばすぎる…!)で紹介した通り、川勝知事は2月28日の会見で、「山梨県内の調査ボーリングをするという差し迫った必要性は必ずしもない」と勝手に決めつけた上で、「調査ボーリングをやめろ」の根拠に、「山梨県側の断層および脆い区間が静岡県内の県境付近の断層と(地下深くで)つながっている。それゆえ、いわゆる『サイフォンの原理』で、静岡県内の地下水が流出してしまう懸念がある」と主張した。

水などの液体を、高いところに上げてから、低いところに移すために用いる曲がった管を「サイフォン管」と呼ぶ。管内を完全に真空状態にして、圧力差を利用して、吸い上げ、低いほうに移すことが「サイフォンの原理」である。家庭用ストーブの石油ポンプを使った移し替えをはじめ、ダム湖から発電所まで配管内を真空にしてダム湖の水を吸い上げて発電に用いる時などに使う。

「サイフォンの原理」が登場した背景には、県リニア担当の渡邉喜好参事が、JR東海の「地質縦断図」を調べていて、山梨県内の断層と地下約500メートルで静岡県側の斜めの大きな断層とつながっている地質縦断図を発見したことが大きな理由だ。ただし、“新発見”という地質縦断図も、JR東海が過去に県に提供したものである。

JR東海の地質縦断図の断層を示す赤い斜線が上から下までつながっていて、まるで管のように見えるから、山梨県内の断層を掘削すると圧力が掛かり、地下深くの静岡県内の断層に影響を与え、静岡県内の地下水が山梨県内の断層に引っ張られると考えて、「サイフォンの原理」を思いついたのだろう。

その上、JR東海がまるで情報隠しをしていると勘違いしたから、川勝知事は2月28日の会見で、「(JR東海は)断層がつながっているのに、つながっていない(地質縦断)図をつくって事実をねじ曲げた。つまり断層はつながっている」と曲解した上で、自信たっぷりに「サイフォンの原理」を持ち出して、静岡県内の地下水が山梨県内へ流出する根拠に挙げたのだ。

つづき
https://gendai.media/articles/-/108539