4/8(土) 7:00    朝日新聞デジタル
https://news.yahoo.co.jp/articles/516cebb16070203ba41ecc9008f3732a662b8c24

 3月に朝日新聞デジタルで配信した連載「この差はなんですか? ジェンダー不平等の現在値」では、給与や昇進、非正規雇用など、さまざまに横たわるジェンダー格差について、当事者たちの声やデータを掲載しました。

【写真】厳しい仕事にもかかわらず、低い待遇に追い詰められていく女性

 たくさんの反響があり、今回は「官製ワーキングプア」と指摘されている非正規公務員の待遇を報じた記事への意見をまとめました。(まとめ・伊藤恵里奈)

■時給1027円、10年変わらなかった

 元国立大学事務補佐員の女性

 私は2010年代後半まで10年以上、地方の国立大学で事務補佐員として、非正規雇用で働いていました。

 「公務員のような職場での一例」として私の経験を話します。

 仕事は留学生に関わる事務全般で、留学生はもちろん、日本人学生、学内の教員や他部署とのやりとりも多く、大変充実した仕事でした。

 身分は「非正規」「事務補佐員」でしたが、長きにわたって勤めて、英語力もTOEICでは900点以上、IELTSでは7.0を取得し、パソコンに精通していることもあり、学内から頼りにされていた自負もあります。

 でも、私の時給はずっと1027円のままでした。

 それでも英語が話せるので、他の部署の事務補佐員より100円ほど高い時給だったとは思います。でも時給が1027円では、手取りはせいぜい10万円程度、ゴールデンウィークがある5月などは10万円を切ることもありました。

 物価の安い地方とはいえ、一人では食べて行けない給料でした。実家で親と暮らしており、親の年金でなんとか食べていける感じでした。親は私を養っていると自覚していました。

■「えらいね。勉強が好きなんだね」

 「これではいけない」と思い、「大学院の修士号を取れば何か変わるのではないか」、「せめて非正規でも『教員』として雇ってもらえれば」と考え、勤務3、4年目から海外の大学院の通信修士課程で学び始めました。

 円高でお金のない私が学位を取るには、むしろ通信教育が最適だったのです。

 日中の勤務時間以外は死に物狂いで勉強し、在学期間ギリギリの5年でなんとか卒業することができました。卒業後は関連する学会に所属し、学会での発表や研修にも積極的に参加しました。

 しかし状況は何も変わりませんでした。必死に大学院で勉強し、学会で発表もした私に対して上司は「えらいね。勉強が好きなんだね」と言ったのみでした。

 同じ頃に学内で「留学生を教員として雇う」という動きがありました。私がずっと接してきた留学生が「助教」の教員になることになりました。

 それ自体は「国際化」を標榜(ひょうぼう)する世の流れに沿うものとして否定はしません。ですが、たまたまコピーミスとして放置されていた「その『学生教員』への給与をいくらにするか」という上司のメールのやりとりを見て、私はもうここでは働けないと思いました。

 その額面は私の3倍でした。

 大学職員を辞めた後、派遣会社に登録しました。今の会社で働いてそろそろ5年目になります。現在も非正規の身分には変わりませんが、今の時給は当時の倍以上です。

 仕事は短時間で終わるようなことばかりで、全然やりがいはありません。英語を使うこともほぼありません。