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閣議に臨む岸田文雄首相=9日午前、首相官邸

 LGBTなど性的少数者への理解増進法案は、19~21日の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前の成立が困難な情勢となった。自民党は党内保守派に配慮し、超党派議連がまとめた法案の修正に着手したが、立憲民主党が反発しているためだ。G7はジェンダー平等を掲げており、議長国・日本の姿勢は論争を呼びそうだ。

 「自民党がぐずぐず言っている。各党でまとめたものをちゃんと通すよう主張したい」。立民の泉健太代表は9日の党会合で、自民党による法案修正を批判した。

 超党派議連は2021年に法案をまとめたが、「性自認」「差別は許されない」との文言に自民党保守派が反発し、国会提出には至っていない。首相秘書官(当時)の差別発言で批判が高まり、岸田文雄首相(自民党総裁)は今年2月に法案提出に向けた準備を指示。自民党は統一地方選後の4月下旬に党内論議を再開した。

 自民党執行部は8日の党会合で、修正案を提示。「性自認」を「性同一性」に、「差別は許されない」を「不当な差別はあってはならない」に置き換えた。

 保守派は、「性自認」だけを理由にトイレや更衣室を選ぶ権利を認めれば、性犯罪などに悪用される恐れがあると指摘。「差別は許されない」と記せば、訴訟の乱発を招きかねないと主張してきた。修正案はこうした保守派の懸念を払拭(ふっしょく)するのが狙いだ。

 しかし、法案の行方は不透明感を増している。自民党は10日に対応を改めて議論するが、保守派は学校の努力規定削除など一段の修正を要求。一方、法案推進派は「できるだけ(超党派法案に)忠実な案が望ましい」(岩屋毅超党派議連会長)などと最小限の修正にとどめるべきだと唱え、党内の集約は見通せない。

 自民党がまとまっても、与野党間の調整は容易ではない。野党内には「一歩踏み出すことが大切」(玉木雄一郎国民民主党代表)と修正案に柔軟な声もあるものの、立民幹部は「骨抜きの法案だ」と猛反発。超党派議連に関わる立民議員の一人は「後退に後退を重ねた内容だ」と語った。

 自民党幹部は9日、「サミット前の成立は無理だ」と言明。サミット前成立を重ねて求めてきた公明党の山口那津男代表も会見で「サミット前に合意を示すことが望ましい」とトーンダウンした。与党内ではサミット前に与党単独で法案を国会に提出し、国際社会にアピールする案も出ている。

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