大阪に本社を置く株式会社パプアニューギニア海産は、エビフライなどの冷凍食品を製造するメーカー。シフト制により人員を管理するのが一般的な工場経営ですが、同社はシフト制を撤廃。パート従業員は好きな時に好きなだけはたらけるという「フリースケジュール制度」を採用しています。そのほか、やりたくない作業をやらなくてもいい仕組み「嫌い表」など、独自のはたらき方を実践しています。

このような制度が生まれたのは、従業員のストレスを軽減するためなのだと代表の武藤北斗さんは話します。同社の目指す、従業員が心地よくはたらける組織づくりについて、お話を伺いました。

「元気な時は狩に行く。原始時代と一緒です」
パートといえば、事前に決められたシフト通りに出勤するのが当たり前。しかし、そんな常識を打ち破る「フリースケジュール制度」を導入している会社があります。それが、株式会社パプアニューギニア海産です。好きな日、好きな時間に好きなだけはたらく。休みの連絡は「しなくてもいい」ではなく、「禁止」。

一見とてもうまくいくようには思えないこのシステムを、同社は9年間継続しています。これまで、従業員が出勤しなくて困ったことはなかったのでしょうか?

「誰も出勤しなかった日は一度もないんです。フリースケジュールがなんで成り立つかというと、はたらけばはたらくほど稼げる時給制のシステムだからです。誰だって1カ月に稼ぎたい金額はあると思うんです。来なければ困っちゃうんだから、来ないわけがないんですよ」

フリースケジュールを導入したことで、むしろ従業員の勤務時間は増えたのだそう。さらに従業員の離職率は下がり、平均勤続年数は向上。ベテラン従業員が増えたことで生産効率もアップし、企業の利益は右肩上がり。武藤さんいわく「良いことずくめの制度」なのだそうです。武藤さんがこのユニークな制度を取り入れたのは、従業員のストレスを軽減するのが狙い。

「シフトを組んでその通りに出勤していると、どうしても無理やりはたらかされてる気持ちになってしまうんですよね。パートを選んでいる人というのはそもそも、子育てなどほかにやらないといけないことがある人が多い。それなのにいつも決められた日時に来なきゃいけないとか、休む時に連絡しなきゃいけないっていうのは、ものすごいストレスになるはずなんです。

でも、フリースケジュールならば、そのストレスから解放されます。体調がよくて時間もあれば、人ははたらこうって気持ちになると思うんです。原始時代のはたらき方だってそうだったはずなんですよ。食べ物がなくならないように、元気な時は狩りに行く。元気がなければ休む。その感覚と一緒なんじゃないですかね」


今でこそ自由にはたらける制度を導入していますが、元々武藤さんは今と真逆の考えだったそうです。

「創業当時はきちんとシフトを組んでましたし、監視カメラを付け、ある程度のプレッシャーを与えながら組織を統制していました。それが工場経営の仕事だと思ってたんですよね。でも、そのやり方では人は辞めちゃうし、職場の雰囲気は良いものではありませんでしたです。組織が疲弊すれば、生産性も下がり、利益も出にくい。結局、威圧的な経営というのは、上に立つ人がラクをしたいだけなんですよ。

そこから、従業員が自分の生活を大事にできて、争いがない組織を目指すというのは、経営の目線から見ても当然やるべきことなんだって気がついたんです」

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