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立憲民主党の泉健太代表(写真:時事)

当面の政局の最大の焦点となる衆院解散・総選挙が今秋以降への先送りとなる中、野党第1党として政権打倒を目指すはずの立憲民主党が、「党分裂の危機」に瀕している。4月の統一地方選・衆参補欠選挙での不振・敗北を受けて、党内から泉健太代表の交代論が噴き出す一方で、次期衆院選での生き残りを懸けて、党内の主導権争いが顕在化したからだ。

6月21日に当初会期通りにあっさり閉幕した前通常国会の会期末攻防で、解散権という伝家の宝刀を振り回した岸田文雄首相に、いいように弄ばれたのが立憲民主党。選挙準備の遅れと野党共闘の破綻での“解散恐怖症”から、党の存亡も懸けて反対すべき防衛財源法の成立容認を余儀なくされた挙句、最大の武器の内閣不信任決議案は完全な空振りに終わった。

当然、党内には泉代表の責任を問う声が広がるが、泉氏は「次期衆院選で150人の議席を獲得できなければ辞めるという実現不可能な目標」(党若手)を掲げて続投の構え。ただ、自公政権打倒のために連携すべき日本維新の会からは「立憲は叩き潰す」との三くだり半を突き付けられ、「兄弟党」だった国民民主も維新との連携を優先する方針で、「まさに八方ふさがりの苦境」(同)に陥っている。

このため、野党共闘のパートナーは事実上共産党だけとなり、本来目指すべき政権奪取は「夢のまた夢」と化し、政治路線や政策をめぐる党内論争も収拾不能となりつつあるため、行きつく先は「党の分裂か崩壊による“行き倒れ”」(党長老)との見方が広がる。

小沢氏軸「有志の会」の野党一本化要求に動揺
同党では、国会閉幕に先立つ6月16日、将来展望を見いだせない状況に強い危機感を持つ小沢一郎氏や小川淳也前政調会長という党有力者を含めた12人の衆院議員が発起人となる「野党候補の一本化で政権交代を実現する有志の会」が発足、党内に波紋と動揺を広げた。

これに対し、泉代表は同夜、電話出演したネット番組で「自民党に対抗するということなら、大局に立って真摯(しんし)に話し合いたい」と、有志の会が求めた衆院選での野党候補一本化も考慮する姿勢を示したが、党内には「何を今さら」(有力議員)との批判が広がった。

泉氏の動揺を見透かしたように、有志の会のリーダーとされる小沢氏は、国会会期末の21日に自らの党内グループ「一清会」の発足を公表した。小沢氏は、1993年に自民党を離党して非自民・非共産の細川護熙政権を誕生させる一方、2012年には手兵を率いて民主党を離党して当時の民主党政権を崩壊させたことなどから、「政界の壊し屋」との異名を持つ。

ただ、小沢氏は2021年衆院選では小選挙区で敗れての比例復活に甘んじ、20年以上にわたって続けた政治塾も今年2月に休止したことで、「いわゆる『小沢神話』は過去のことのなった」(自民長老)とみられていた。その小沢氏が今回、公然と動き出したことで、政界では「今度は立憲を壊すつもりでは」との見方も広がる。

16日に開かれた「有志の会」の発足会見では、党内の衆院議員の半数を超える53人の賛同が得られたと発表されたが、小沢氏の動きに不信感を持つ議員も含まれていた。

複数の人物が「趣旨には賛同したが、小沢氏が中心ということで政局絡みとの疑念を持ち、呼びかけ人には加わらなかった」(有力議員)と漏らしている。「小沢氏の背後に共産党の影が感じられる」(同)のが理由だ。基本的に中道路線を追求する泉代表は共産党との共闘には否定的だが、小沢氏はこれまでも水面下で志位和夫共産党委員長との連携を探ってきたとされるからだ。

松原氏離党の陰に蓮舫氏のくら替え説
そうした中、今回の「有志の会」「小沢グループ」の発足による路線対立の顕在化と並行して、党内に執行部と離反する動きが出始めた。その典型が松原仁衆院議員の動きで、同氏は6月9日、党執行部に離党届を提出した。当選8回で、旧民主党政権時代に拉致問題担当相も務めた同氏の離党の理由は「10増10減」に伴う選挙区調整への不満だ。