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複数の女性ウーバー配達員が、今までに受けたセクハラ被害などについてThe Independentに告白。ジェンダー、移民、ギグエコノミー、企業対応など、複数の要素が重なって問題化していることが明らかになった。(フロントロウ編集部)

「部屋に入って食事をする手伝いをしてくれ」…下心見え見えの言葉に恐怖
 家にいながら美味しいお店の料理が食べられると、日本でも多くの人が利用するようになった「ウーバーイーツ」などのフードデリバリーサービス。しかし、配達員が個人で家に食べ物を届けるという仕組みや、「ギグエコノミー」と呼ばれるプラットフォームを介して単発の仕事を請け負うという労働形態は、とくに女性配達員にとって危険な環境を作り上げてしまっていると当事者は言う。

 匿名希望のある女性配達員が英The Independentに語ったのは、恐怖でしかないセクハラ被害。ある男性の家にフードデリバリーに行った女性が目にしたのは、「窓からこちらを見て手を振る男性」という普通の光景。しかし女性が玄関まで行きドアを開けた時、目に飛び込んできたのは男性の全裸姿だった。このセクハラに女性は深いショックを受けたが、イギリスに住む移民として自身が弱い立場にあると考えていたため、苦情を言うことは避けたそう。

 このようなセクハラ被害は決して珍しいことではないといい、ロンドンで配達員として働く別の女性も下着姿の男性に迎えられた経験があるという。「ドアマットの上に食べ物を置いたところ、男は私が家に入って食べ物を与えるのを手伝う必要があると言った」と32歳の女性配達員は語った。「彼が助けを必要としていないのは明らかだった。性的な意味合いが含まれていた。本当に怖くなって、自転車に乗って逃げた」。

 イギリス発のデリバリーサービス「デリバルー」で働く女性もまた、似たような経験について語った。アナによると、食べ物を届けた時に男性客が性的な誘いをしてくるのは、非常によくあることだそう。「みんなが思っている以上によくあること。ある時アルコール飲料のパックを届けたら、家に入って一緒に飲もうと言われたこともあった。客はそこが自分たちの家であるため、権力を握っているような状態になっている」とアナは話す。

 女性ギグワーカーの実態については、今年に入ってだけでもGuardianやWIRED UKといった英メディアが報じているが、女性たちの証言内容はThe Independentで報じられた経験と一致している。

プラットフォーム側の対応が十分ではないという側面も
 女性配達者たちからは、客側からドライバーの顔写真を見ることができるというフードデリバリーのシステムへの懸念の声も聞かれた。客の安心のために存在するシステムではあるが、女性配達員が来ることを事前に確認できるため、女性配達員にとってはむしろ危険なものになってしまっているという。

 配達員は社員ではなくプラットフォームを介して単発の仕事を請け負うギグワーカーであるため、企業に意見を通すことは難しく弱い立場にある。さらに社員ではないため、問題があった場合に企業は顧客側につくことが多い。ギグワーカーの権利のために闘っている英国独立労働組合(IWGB)のヘンリー・チャンゴ書記長は、「ギグ・エコノミーや不安定雇用の労働者は、とくにセクハラを受けやすい。ゼロ時間契約のような不安定雇用の多くは、権力の乱用に異議を唱えたことへの報復として雇用主が簡単に仕事を取り上げられることを意味するため、これらの労働者は声を上げることを恐れている」とBig Issueに語った。