世の中には「あれ、どっちだったかな…」とおぼろげに記憶してしまう事象が多々あるが、その正式名称が誕生した「背景」を知ると、思わず納得してしまうもの。賢明なる読者には既知の事実として映ったり、「細かすぎるだろ!」とツッコミを入れたくなるケースもあるかと思うが…決して少なくない人々が「誤って記憶している事象」の正体について探っていきたい。

今回取り上げるのは、JR駅構内の売店「KIOSK」の読み方についてである。

■KIOSKの日本語表記、なんと読む?
関東在住の記者にとって「KIOSK」の読み方は「キオスク」1択である。しかしある日、こちらを「キヨスク」と発音する勢力の存在を知ったのだ。

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そこで今回は、全国の10~60代の男女1,000名を対象として「同店舗の読み方」に関する調査を実施することに。調査の結果、全体の51.6%が「キオスク」、残る48.4%が「キヨスク」と回答していることが明らかになった。

年代ごとの回答を見ると、最も「キオスク」の回答割合が大きいのは10~20代だが、次点は50代となっており、年代ごとの回答傾向にはあまり法則性がないのだろうか。

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となると、次に考えられるのは「地域ごとの特色」である。そこで今回は、駅構内の売店事情について「株式会社ジェイアール西日本デイリーサービスネット」と「株式会社JR東日本クロスステーション」に詳しい話を聞いてみることに。その結果、KIOSKをめぐる「意外な事実」が明らかになったのだ…。

■ルーツはなんと90年前
残念ながら「ジェイアール西日本デイリーサービスネット」は取材NGとのことであったが、同社の公式サイトを見ると、表記が「キヨスク」で統一されていることに気づく。

そこで「JR東日本クロスステーション」には表記の詳細だけでなく、KIOSKの歴史そのものについて尋ねてみることに。すると、1932年(昭和7年)に設立された「財団法人鉄道弘済会」の店舗営業に、KIOSKのルーツがあると判明したのだ。

同年4月1日より上野駅、東京駅にて営業開始となったこれらの店舗は「鉄道弘済会売店」という名称で知られていたが、72年(昭和40年)に創立40周年を迎えた鉄道弘済会は店舗のイメージチェンジを図るため、愛称を募集。選考の結果、翌年に「Kiosk」(キヨスク)への改名が決定したのだった。

命名の背景について、JR東日本クロスステーション担当者は「キヨスクとはトルコ語を起源とする『あずまや』を指し、『便利で小さな売店』の国際語として広く使われている呼称となります」とも説明している。

そして87年(昭和62年)より、鉄道弘済会のキヨスク営業を中心とする収益事業をJR旅客鉄道会社6社に対応した地域に分割することが決定し、JR東日本管内は「東日本キヨスク株式会社」という名称に。