https://newsdig.ismcdn.jp/mwimgs/d/8/860w/img_d813af35f764fba3290fb9d5ce5111f7766816.jpg

米沢牛の産地の一つ、山形県小国町では黒い牛の体をシマ模様にペイントしているという。その姿はまるでシマウマだ。牛が、ウマ化するとは、牛の沽券にかかわる一大事のようにも思える。しかし、そこには牛のことを思うちょっと変わった愛情があった。

「笑っちゃいそうになったけど・・・」“シマウシ”に姿を変えて モウ~NOストレス!
山形県南部にある置賜地方。日本三大急流の一つ、最上川を有し、周囲を山々に囲まれた自然の恵みが豊かな場所だ。ここは日本有数のブランド牛「米沢牛」が育まれる場所としても有名なのだが、3年前からある取り組みが注目を集めている。

それは、牛の『シマウマ化』だ。黒毛和種の、つやのある黒く美しいボディに、白い縦じま模様が浮き上がり、まさにシマウマのような様相だ。牛たちに一体何が起きているというのだろうか。

山形県置賜総合支庁農業振興課 菅井技師
「牛の虫よけ対策の検証です。現在、繁殖雌牛の簡易放牧の拡大を推進したいと考えているのですが、吸血昆虫による牛のストレスが課題となっています。これをクリアするため、ある研究機関の実施例を基に3年前から検証を行っています」

毎年夏になると多くの牛飼いの間で頭を悩ませるのが吸血昆虫「アブ」と「サシバエ」だという。アブやサシバエの吸血行動は牛にとって大きなストレスとなり、また吸血昆虫を忌避する行動によって体力が消耗し、乳量の低下や繁殖に悪影響を及ぼすのだという。

そこで期待されているのが「牛のシマウマ化=シマウシ」なのだ。

2019年、愛知県と京都大学の研究チームが「シマウマには虫があまり寄りつかない」という海外の論文をヒントに牛でも応用できないか検証を開始。すると吸血昆虫の飛来が減少し、牛が虫を追い払うときにする「しっぽ振り」や「首振り」などの回数も減ったという。

この研究結果を受け、自治体も「牛のシマウマ化=シマウシ」に動いた。すると、シマウマ化に効果が見られたのだ。

山形県置賜総合支庁農業振興課 菅井技師
「検証1年目の2021年、シマ模様の牛と、塗装していない牛を並べて、牛が吸血昆虫を避ける際の行動を観察したところ、シマウシは塗装していない牛と比べて忌避行動が平均で約5割減少しました。さらにアブ捕獲器を併用すると約7割も減少しました」

牛をシマシマに…。そんな自治体の呼びかけに、初めは畜産業者は戸惑った。しかし、実際に参加してみて、驚きは感嘆に変わったという。

遠藤畜産 遠藤寛寿さん
「最初聞いたときは『え、ウソだろ』って思いましたよ。笑っちゃいそうになったけど、ゴムマットを細長く切ったものを牛にあてて、均等になるよういに白いスプレーでシマ模様にしたよ。そしたらさ、嘘みたいに全く虫が来ないのよ。本当だったんだと驚いたね」

半信半疑で始まった検証だが、今ではすっかり虫よけ対策として認知され、当たり前のようにシマウシ化が進められている。そして今年は場所を牛舎から放牧場に移し、7月20日から検証が始まった。さらに、シマウシは想像を超える美しい輝きを放つ姿にアップグレードされていた!

「早く放牧してよ」 金色に進化するシマウシは“レンタカウ”でも大人気
今年で3年目に入る検証だが、シマウシの手法も進化をしている。牛の体からは脂が出るため、一般的なアクリルスプレーだと1週間程度で落ちてしまう。そのため、2022年には塗装資材の検討が行われた。