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一部中国人観光客の“爆狩り”が問題に

 中国で日本への団体旅行が解禁され、各地で中国人観光客の姿を目にするようになった。インバウンド収入には欠かせない存在だが、一方で捨て置けない問題が発生しているという。ブランド品やハイテク家電の爆買いならぬ、生物の「爆狩り」で、地域住人は頭を抱える事態になっていた。

 深夜の公園で、懐中電灯が樹木をよじ登るセミの幼虫を照らす。中年女性が手を伸ばして白い幼虫を無造作につまんではペットボトルに入れていく──。8月上旬、動画投稿サイトにアップされたひとつの映像がSNSで物議を醸した。投稿主は山東省出身の女性。一家で日本に滞在中の一コマで、公園でセミを“爆狩り”する一部始終が収められていた。

 動画の終盤、女性はセミがいっぱいに詰め込まれたペットボトルを何本も映し出し、「日本に来てどこにでもセミがいると知ったときの気持ちといったら」と喜びを爆発させるのだった。この動画に対して、日本のSNSでは〈最悪〉〈自分の国でやってほしい〉との批判が相次いだ。

 昨今、一部の中国人観光客によるセミの爆狩りが問題になっている。北京在住経験のある中国ウォッチャーでライターの如月隼人氏が語る。

「セミは中国の一部の地域では『唐僧肉』と呼ばれ重宝されてきました。唐僧肉とは三蔵法師の肉を意味する言葉で、不老長寿になるといわれるほど滋養強壮にいいとされる。実店舗だけでなく、大手通販サイトでも売られるほど人気です。

 また、この10年でセミ1匹当たりの市場価格が3倍に高騰している。来日した一部の中国人観光客にとって、市街地に大量に生息しているセミはお宝に見えるのでしょう」

 中国ではセミの繁殖業者の年収が2000万円を超えるケースもあるそうで、セミ長者も生まれているという。

「過去にも2018年に埼玉県川口市や蕨市の公園で、中国人観光客によるセミの爆狩りが多発し、地域住人から苦情が殺到。自治体が〈セミの幼虫等の捕獲はやめてください〉と中国語、英語で書いた看板を立てることになりました。

 その後、2019年末以降はコロナで来日観光客が激減したため被害は収まりましたが、8月に中国で日本への団体旅行が解禁されたことで、再びセミの爆狩りが懸念されています」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 冒頭の動画はまさにその懸念が現実になっていることを示すものだった。

 都内を観光中の中国人カップル(南京出身)にセミの乱獲について聞いてみると、

「日本社会に迷惑をかけるのは絶対ダメ。でも、セミが身近にたくさん生息しているっていうのは驚きです。油で炒めると美味しいんですよ。無料で食べられるなら、正直食べたいなという気持ちはあります(苦笑)」

 と話すのだった。

 食用ではないが、同じく昆虫で注目されているのがカブトムシだ。

 2020年9月、中国遼寧省の税関が日本から届いた郵便小包のなかから生きたカブトムシ9匹を発見し、押収。近年、中国ではペットとしてカブトムシの人気が高まっており、1匹数千元(日本円で数万円)で取引されることもあるという。

「夏の日本で木々の樹液に群がったカブトムシを採って、小包で本国の家族に送る中国人が増えているんです」(在日中国人ライター)

※週刊ポスト2023年9月8日号

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