5日の「モーニングショー」で玉川徹氏が、円安や金利や国債について持論を熱く語っていた。

真剣に見ていた訳はないのでうろ覚えだが、確か、ガソリン高騰の主因は円安だから、日本の金利(パネルには-0.1%)と米国の金利(同5.5%?)の差を縮める必要があるが、金利を上げると1000兆円を超える国債の利払いが大変だ、よって国債を減らさねばならない、との趣旨だった。

ゲストの経済評論家の方も「玉川氏の仰る通り」と同調していた。が、これでは視聴者に偏った情報しか伝わらない。これなども「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」などを定めた「放送法第4条」に抵触する事例ではあるまいか。

そこで「経済」の素人に過ぎない筆者だが、新聞や雑誌の記事、あるいは財務省や日銀のサイトの資料から、以下に玉川氏とは異なる「角度から」この問題の「論点を明らかに」してみたい。



6月27日の「日経新聞」は「日銀の国債保有53.3%に 3月末、過去最大の更新続く」との見出しで、1~3月期の資金循環統計によると、日銀の国債保有割合(国庫短期証券を除く時価ベース)が23年3月末に53.3%と過去最大になったと報じた。

記事には、3月末の時価ベースの国債発行残高が1080兆円となり、保有先は日銀53.3%、次いで保険・年金21.9%、銀行などの預金取扱機関8.9%で、海外の保有は昨年末の7.4%から7.2%に下がったとある。一方、家計の金融資産も過去最高の2043兆円になり、その内1107兆円が現預金だそうだ。

玉川氏の心配する「国債の利払い」の相手先の大半が国内で、海外は7.2%に過ぎないうえ、家計の金融資産が国債の倍近くあるなら、本稿はこれで終わりにしても良いのだが、念のため保有先のより詳しい資料をネットで探すと、財務省のサイトに令和5年3月末時点の「国債」の詳細資料が載っていた。

それに拠れば、1080兆円の保有先の内訳は、日銀576兆円(53.3%)、生損保等206兆円(19.1%)、銀行等119兆円(11.0%)、海外78兆円(7.2%)、公的年金49兆円(4.2%)、年金基金30兆円(2.8%)、家計13兆円(1.2%)、その他13兆円(1.2%)となっている(兆円以下を四捨五入)。

なぜ保有先、すなわち「国債の利払い先」の明細が重要なのかと言えば、海外の保有先以外の国内の保有先に支払われた国債の利息は、その多くが日本国内に留保されて、法人なら投資や賃上げや内部留保などに、個人なら預貯金や消費などに回されることになるからだ。

次に日本の国家予算に占める「国債費」の割合はどうなっているかを調べると、昨年5月31日の「日経」記事に22年度当初予算に関して、次のように書いてある。(太字は筆者)

国債費とは 国の借金である国債の償還や利子の返済のために充てる費用。2022年度の国の一般会計当初予算107兆5964億円のうち、国債費は24兆3393億円に上る。21年度当初予算に比べて5800億円程度増えて過去最大となった。一般会計のうち22.6%を国債費が占める。

国債費は償還期限を迎えた国債の元本を返済するための償還費と、発行した国債の利払い費の2つに分かれる。22年度当初予算で償還費は16兆733億円、利払い費は8兆2660億円だった。赤字国債や建設国債など普通国債の発行残高は増加の一途をたどり、3月末時点で1000兆円に迫る。積み上がった国債の償還費と利払い費は毎年の予算編成を制約する要因になる。

太字部分は、財務省を代弁する「日経」らしい書き振りだが、これとは「異なる角度から」考える識者も多い。それはさて措き、約8兆円余りの利払いは、国債の保有比率やそれぞれが保有する国債の種類などに基づいて、日銀、生保や損保、銀行、その他の国内及び海外の保有先に支払われることになる。

償還費約16兆円は「60年償還ルール」採用の結果である。これは日本独自の「ガラパゴス・ルール」で、平たく言えば「国債残高1000兆円を60年で割った1年分の数字」をここに計上する。とはいえ、実際に償還はせず借り換え処理をしているに過ぎないから、その分の国債残高が減る訳ではない。