両手で両膝を抱きかかえて座る「体育座り」を見直す動きが、埼玉県内の学校で出始めている。
体に負担をかける姿勢で、医療関係者から腰痛の原因になるなどと指摘されている。
体育座りは国が定めた手引に掲載されているが、現在の見解は「強制するものではない」。
県教育委員会は今後、これを教員向けの研修会で周知する予定だ。(服部菜摘、川村祐生)

今月16日、体育祭が行われた熊谷市立富士見中学校。
開会式で「腰を下ろしてください」のアナウンスが流れると、生徒たちは携帯用の小さなパイプ椅子に腰掛けた。
座っていたのは約15分間。3年生の女子生徒(15)は
「腰も痛くないし、足が崩れて注意されることもない。集中して話を聞ける」と話していた。

 この椅子は今年度、教材費として保護者から2200円ずつ集めて導入したもので、全校生徒約680人が1台ずつ持っている。
体育館や校庭で行う全校集会などで使用し、生徒は従来の体育座りか椅子に座るかを選べる。

 「家庭で床に座る機会が減り、生活様式は変わっているのに、体育座りは昔から変わらない」。
導入を決めた橋本雅之校長は10年ほど前から、長時間の体育座りで腰の痛みを訴える生徒がいることが気になっていたといい、
生徒にも意見を聞いて「集会は体育座り」というスタイルを見直すことにした。

あくまでも「例」

 体育座りは1965年、当時の文部省が教員向けに発行した
「体育(保健体育)科における集団行動指導の手びき」の中で、
「腰を下ろして休む姿勢」として例示されたものだ。手引は2回改訂されたが、現在も掲載されている。
しかし、スポーツ庁の担当者は「あくまで例であって、強制するものではない。
各学校では、健康に配慮して実情に応じて判断してほしい」とする。

 とはいえ、現場からは「小学校からやっているので、中学生は言わなくても自然と体育座りをしている」(県西部の中学教諭)
との声もあり、習慣として根付いている面もある。

体育座りは6月の県議会一般質問でも取り上げられた。
日吉亨教育長は「各学校に対し、体育座りに関する国の見解について改めて周知する」と答弁しており、
様々な座り方の特徴や体にかかる負担などをまとめ、教員向けの研修会で情報提供を進める方針だ。

長時間継続は体に悪影響

 さいたま市立病院で運動やスポーツ領域のリハビリを担当する理学療法士・西岡幸哉さん(37)=写真=。

 「体育座りを長時間続けると、子どもの体には悪影響があります。
座った時に座骨の1点に圧力がかかり、痛みや足のしびれが出る可能性があるほか、背中が丸まるため、
腰に負担がかかり、腰痛の原因にもなるからです。
ほんの数分なら問題はありませんが、長時間になるときは大きめの椅子を使うとか、あぐらにするのがいい。
定期的に休憩時間を設けるなど、学校は子どもの負担にならない環境をつくってほしいです」

https://news.yahoo.co.jp/articles/022c0e4c88347bef546fa2597332395ee814571e?page=2