少子高齢化が叫ばれて久しい。内閣府の調査によると65歳以上の人口は総人口に占める28.4%にも及ぶ。2025年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると試算され、5人に1人が75歳以上の後期高齢者。子供の人口は49年連続で減少しているというのだから恐ろしい。

危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は警笛を鳴らす。

「少子高齢化はさまざまな問題を引き起こしますが、中でも私が憂慮しているのが高齢化するマンションです。高度経済成長期に建てられたマンションの多くは、今大きな岐路に立たされているのです。そしてその行く先は、とても暗いと言わざるを得ません」

高齢化するマンションとは一体どんなものなのだろう?平塚氏が実際に関わったマンションの事例から紐解いていきたい。

「例えば、都心から少し離れたベッドタウンで1990年代に建築されたマンションは、当時億ションになることも少なくありませんでした。しかし、今その価格は大きく下落しています。下落していれば、買い手がつくとお思いでしょう?しかし、現実はそう甘くはありません。買い手がつかないどころか、より深刻な事態に陥っているんです」

問題の根底にあるのは高齢化だと話す。

「成人した子どもたちが出ていき、気がつけば高齢者ばかりになってしまった…そんなマンションは、もう人間で言うと『要介護状態』。いくら価格が安くても、若い人が住みつかなくなるんです。

なぜかといえば、ひとつは管理が行き届かなくなるからです。ご存知の通り、マンションは管理組合によって維持、そして管理がなされます。これは住人全員で組織されるもので、業務を管理会社に委託するケースも多くありますが、最終判断は管理組合が主体で行うことになっています」

管理費や修繕積立金などのお金の管理もこの管理組合が行うものである。

「この管理組合が、住民の高齢化により、すでに議決期間として破綻しているところが多いんです。

すると自己管理ということになりますが、高齢化したマンションでそんなものは機能するはずがありません。気がついた頃にはぼろぼろのマンションになってしまうということです」

さらに昨今の値上げラッシュが拍車をかけているらしい。

「何年も前からマンションの高齢化は社会問題だと言われてきましたが、この1、2年の値上げラッシュでトドメを刺された形です。なかでも電気代、ガス代、水道代など、決して欠くことのできないライフラインの値上げは深刻です」。

光熱費は、個人での支払いではないのだろうか?

「もちろん個人で使ったものはそうですが、マンションには共有部が存在します。

その光熱費は管理費から捻出されることになっているんです。しかし昨今の値上げで、光熱費は倍以上になってしまいました。高齢化するマンションは、そもそも年金暮らしの人ばかり。

お金に余裕がなく、滞納する人も多々います。さらに空き部屋が増えるとそこからもちろん管理費は徴収できません。このような理由から、通常よりもかなりカツカツの会計なんです。無論、値上げした光熱費では足りず、補填せざるを得ません」

いったいどこから補填するのだろう?

「マンションが数年に1度行う修繕のためにしているのが、修繕積立金です。その積立金から補填するんです。今はなんとか運営できているマンションでも、この値上げには太刀打ちできません。このままいくと底をつくことになるでしょうね。

もちろん大規模修繕をすることもできません。すると外壁がはげる、下水道が逆流する、手すりが錆びて朽ちるなど、住みにくさは加速します。若い人が寄り付くはずもありません。こうして、マンションは悪循環に陥り、スラム化しているのです。これは絵空事ではなく、実際に私が見たリアルケースです」