漢字検定で一級に合格するために勉強しています。交流サイト(SNS)を通じての勉強は刺激的であり、ときに勉強仲間が校閲にも役立つ知識を与えてくれます。

その一つが「別字衝突」という現象です。これはもともと意味の違う別々の字が、字体の変化によって同じ字体になる現象です。時代が進むにつれて変化し同形になってしまうこともあれば、「当用漢字字体表」や「常用漢字表」に新字体として採用された結果、衝突を招いたことはよく知られています。

別字衝突を起こした漢字の一つが「芸」です。芸は「藝=ゲイ、わざ・うえる」の新字体としての芸と、藝とは別の字としての「芸=ウン、くさぎる(草を刈り除く)」の2つの字が存在します。前者は①技・技術②植物を植えるの意味を持ち、後者はヘンルーダという香草の一種で薬用や観賞用にも使われるミカン科の多年草を意味します。2つの漢字は別字と扱われているにもかかわらず、字体は全く同じです。

「欠」も字体衝突が起きている漢字です。「欠」の訓読みは「か(く)、か(ける)」で旧字体は「缺=ケツ」。しかし、「あくび」を漢字で書くと「欠伸」。「欠」一字でも「あくび」と読めてしまいます。これも「缺」の新字体としての欠と、缺とは別の字としての「欠=ケン」があり、2つの漢字が衝突したからといわれています。

「弁」は3つの字体が衝突を起こした漢字です。弁の旧字体は「辨」「瓣」「辯」の3つ。それぞれ意味は違い、辨は「わける、わきまえる(弁証、弁別)」。瓣は「はなびら。また、液体や気体の出入りを調節するもの(花弁、安全弁)」。辯は「かたる。話す(弁解、答弁、雄弁)」。これらの漢字が字体衝突を起こし「弁」の形に3つの異なる意味が全てまとまる結果になりました。

新字体に採用された形のほうが簡易で覚えやすい分、一定数、特に漢字好きの人の中では旧字体のほうが意味を捉えやすいという意見も聞かれます。

みなさんはどちらが好みでしょうか。ちなみに私は、この現象を知る前は何とかして見分けるために2つの文字を並べて凝視してしまったこともありました…。面白い知識を授けてくれた勉強仲間に感謝です。(太)

https://www.sankei.com/article/20240204-HMUITUAE5VK4RBLM7BVKTKLGYY/