エスカレートする北朝鮮の「韓国離れ」
年末年始に突然、北朝鮮の金正恩総書記が韓国を「一つの民族」から除外し、「第一敵対国」として指定したことの衝撃度はすさまじかった。金正恩の「韓国離れ」はどんどんエスカレートし、北朝鮮の憲法上からも平和的統一を削除させた。

そうした中で、韓国では1月2日に野党『共に民主党』の李在明代表が訪れた釜山で暴漢に襲われ、手術を準備していた釜山医学大を無視してリコプターでソウル医大へと搬送される事件が勃発。この事件が大きく報道される中で、北朝鮮が韓国に発した重要なメッセージが韓国内に十分に伝わらない状態も危惧されたが、今度は北朝鮮が1月5日から韓国の西海(仁川空港がある地域)の砲撃演習をNLL(北方限界線)ギリギリで3日間も行った。これによって“李在明騒動一色”だった韓国は、北朝鮮の年末からの発言、行動に注目せざる得ない状況になった。

日本でも年末の金正恩氏の発言については目立った報道がなかったが、砲撃演習が始まったのと同時に、大きく報じられるようになっている。

そうした中で、いま気をもんでいるのが、これまで韓国内で従北姿勢、思想を貫いてきた者たちだ。

従北思想者たちの「自業自得」
これまで韓国の従北思想者たちが活動してきたのは、大義名分としての「平和的統一」があってこそだ。しかし、その「平和的統一」を北朝鮮が否定してきたのだから、活動の土台が壊されたに等しい。

じつは韓国左派思想者の多くはこの「平和的統一」という大義名分を最大限利用し、国民の理解を得ては私腹を肥やしてきたという実情もある。そして、北朝鮮もそうした人物たちが北朝鮮を「利用」して私腹をこやしていることを十分に理解していた。

一方で、そうした人たちからの「見返り」もないことに気づき始めた北朝鮮は、ここ数年、だんだんと我慢がならなくなってきたという事情もある。実際、金正恩氏は「北朝鮮大好き」のアピールを隠さない文在寅元韓国大統領に対して、まったく見向きもしなくなっていた。

そして、そのピークが訪れたのだろう。金正恩氏は韓国を「第一敵対国」と明言し、有事の際は核武力によって武力統一をする準備の指示まで出したわけだ。

言うなれば、従北思想者たちの“自業自得”ともいえる結果なのだ。

外れた左派の思惑
じつは、北朝鮮の3日間続いた砲撃演習時でもソウルの市民はあっけらかんとしていた。

実際、現在は日本に療養滞在している私だが、心配になり友人、知人に連絡をしたがみんな「他人事」の様に話していた。

ただ、彼らが注目していたのは、今後、左派思想者たちがどんな大義名分を持って活動を行うかだ。

韓国では尹政権になってから、北朝鮮関与を含めて従北思想者たちが北朝鮮を私利私欲のため利用してきた疑惑で追い詰められて来ていた矢先の出来事である。彼らはいまどんな気持ちで事態を見つめているのだろうか。誰もが多くを語ろうとしないことに、その“真意”が透けて見えるようである。

そもそも、韓国では文在寅大統領誕生によって左派従北思想者寄りの人事が行われ、現在に至っている。その文在寅大統領退任後の政権を取れなかったことで左派従北思想者たちの思惑は外れた。そして、そこからどんどん綻びが生じ、今ついに決定的な窮地に立っているといえるだろう。

4月の総選挙ではそうした“厳しい判断”が下されるかもしれない。

https://gendai.media/articles/-/123742