郷原信郎郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士
3/31(日) 17:01
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/f6fa8c091970fb333dfe7de64e44bb20f00757ef

令和6年3月28日、上脇博之神戸学院大学教授と私が告発人となり、参議院議員丸川珠代氏及び清和政策研究会代表者・会計責任者松本淳一郎氏の政治資金規正法(公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」)違反等についての告発状を、東京地方検察庁に提出した。

翌29日、上脇教授と私は、司法記者クラブ加盟記者、平河町クラブ加盟記者に案内状を送り、上記告発に関するオンライン記者会見を行った。

会見の模様は、YouTube《郷原信郎の「日本の権力を斬る!」》で公開している。【丸川珠代参議院議員等の 政治資金規正法違反の告発について オンライン会見】


YouTubeには、1日で4万を超える多数の視聴があり、コメントは、告発への共感・賛辞であふれている。丸川議員への「愚か者めが!」とのコメントも目立っている(民主党政権期の子ども手当法案の採決時に「愚か者めが!、このくだらん選択をしたバカ者ども絶対忘れん!」と大声でヤジったことが、その後、国会でも問題にされ、岸田首相も「議論を行う際の態度発言等において節度を超えていた」と陳謝している)。

清和政策研究会(安倍派)の政治資金パーティー裏金問題については、既に、派閥のほうは、所属議員の資金管理団体・政党支部への寄附だったが、政治資金収支報告書に記載されていなかったとして訂正を行っている。

今回の「政治資金パーティーの売上のノルマ超過分の「還流」ないし、「中抜き」(売上のノルマ超過分を議員側が派閥に入金せず留保することによって取得する方法)は、「収支報告書に記載しない」との前提で議員側にわたったものなのであるから、議員個人に帰属するものであり、それは、政治家個人への違法寄附(政治資金規正法21条の2第1項違反)又は個人所得であると、昨年末から再三にわたって指摘してきた(【政治資金パーティー裏金は「個人所得」、脱税処理で決着を!〜検察は何を反省すべきか。】)。

議員個人の違法寄附が立件され起訴されていれば、違法寄附は全額没収され(政治資金規正法28条の2)、議員の手元に「裏金」が残ることはなかったはずだ。

ところが、検察は、所属議員の資金管理団体・政党支部の収支報告書の虚偽記入だけを立件し、松本氏を起訴し、安倍派がそれと平仄を合わせた収支報告書の訂正を行って、「捜査の終結」とされてしまったために、ほとんどの議員は処罰を免れ、しかも、納税すらせず、「単なる不記載」などと開き直る態度に終始しているのである。

当然のことだが、国民からは激しい怒りが沸き上がり、折しも、昨年秋のインボイス制度導入で、耐え難い負担をさせられ、しかも、確定申告にも苦しめられている時期であったこともあって、「自民党裏金議員」に対する怒りは炎上・爆発した。それらの「国民の怒り」を受けて、野党が国会で、裏金議員に対する「政治家個人に対する違法寄附」での処罰や所得税の課税について質問しても、岸田文雄首相は、「検察捜査の結果を踏まえて適切に判断するものと承知している」との答弁を繰り返してきた。

岸田首相自らが、安倍派幹部の聴取を行うという「異常な事態」となり、この混乱が収まる気配はない。根本的な問題は、検察が、個人あての寄附として捜査処分しなかったことが、「強力なディフェンス」となって、「裏金議員」の処罰・納税を免れさせてきたからなのである(【「裏金議員・納税拒否」、「岸田首相・開き直り」は、「検察の捜査処分の誤り」が根本原因!】)。

丸川議員も、「中抜き」の方法でパーティー券売上のノルマ超過分を得た「裏金議員」の一人だ。

しかし、他の議員とは異なり、その裏金が「政治家個人宛の寄附」であったことについての、弁解しようのない「決定的な根拠」がある。

一つは、「派閥からノルマ超過分は持ってこなくていいと言われた。資金は(自分の)口座で管理していた」と記者に説明していることだ。(「丸川珠代元五輪相、不記載822万円 『超過分は口座で管理』」毎日新聞2024/2/1 )この説明は、資金が個人に帰属するものと認識していたことを認めているに等しい。


つづく