3月27日、 ドイツ東部ケムニッツで化学エンジニアリング会社を営むヨルグ・エンゲルマン氏はこれまで、外国人の熟練労働者を呼び込むために手を尽くしてきた。写真は18日、ケムニッツの住宅街を歩く女性(2024年 ロイター/Matthias Rietschel)
[ケムニッツ(ドイツ) 27日 ロイター] - ドイツ東部ケムニッツで化学エンジニアリング会社を営むヨルグ・エンゲルマン氏(57)はこれまで、外国人の熟練労働者を呼び込むために手を尽くしてきた。だが、やってきた外国人労働者は人種差別的な中傷や排斥に遭い、何人かは去って行った。

ドイツは熟練労働者の不足に苦しんでいるが、外国人嫌悪が原因で外国人スタッフが離れていく例が相次いでいる。ロイターが取材した中堅企業5社が、こうした傾向を証言した。

ドイツとオランダでは、多くの大企業も反移民感情による採用の難しさに懸念を表明しており、実際に従業員に辞められたという企業もある。

エンゲルマン氏が家族経営するCACエンジニアリングは、差別が原因で過去1年間に40人の外国人従業員のうち5人ほどを失った。

「私たちはできる限りのことをしている。でもボディーガードにはなれない」とエンゲルマン氏。「彼らがドイツに真に貢献したいと思う外国人熟練労働者だということを、理解していない市民が一部にいる」

内務省によると、ドイツ全土で起こった外国人嫌悪による憎悪犯罪(ヘイトクライム)の件数は、2013年から22年にかけて3倍以上の1万件超に増加した。

一方、ドイツの公式推計によれば、35年までにドイツ全体で700万人の熟練労働者が不足する見通しだ。ドイツの総労働人口は4600万人程度。

共産主義崩壊後、工場閉鎖や解雇によって若者が流出し、出生率が低下したドイツ東部の環境はより厳しい。

チェコとの国境に近いザクセン州のケムニッツ市は、熟練労働者の誘致に努めている。エンゲルマン氏の会社は外国人従業員の定住を促進するため、仮住まいのほか、語学教習や運転教習の手配を手伝っている。

しかしケムニッツは2018年に反移民デモが暴動に発展して以来、反移民感情の中心地と化した。

東西ドイツ統一以来、市の人口は20%ほど減って25万人強となっている。市場社会研究所のデータによると、住民に占める外国人の比率は2000年の2%強から14%近くまで急増した。

月曜日の夕方6時ごろには、市議会議員の4分の1を占める極右政党のひとつが推進する「月曜デモ」が定期的に行われ、約250人が街を行進する。最近のイベントでは、デモ隊が民族主義的な歌を歌い、太鼓を叩き、ザクセン州やドイツ、ロシアの旗を振る光景まで見られた。

外国人にドイツ語を教えるためにドイツに来たというエジプト人のファリド・モクビルさん(31)は、しばしば人種差別を経験するが、根に持ってはいないと語る。

「ここに来て最初の週、スーパーに買い物に行ったとき、年配の女性が私を見て叫び始めた。私の外見のせいかどうかは分からないけれど」とモクビルさん。「数日前には路面電車の中で少年が『ここは泥棒したいアフガニスタン人だらけだ』と大声で言っていた」

一方、生まれたときからケムニッツに住むクリスチーネ・ビラウアーさん(84)は、ドイツの外国人移民は高齢者にはない経済的な恩恵を受けていると感じている。

「街にいると、母国語を話す人が少なくなったと感じる日もある。昔のマナーも懐かしい」と心情を吐露した。

ケムニッツ市の報道官、マティアス・ノバク氏は、大多数の市民は過激主義に反対していると述べ、ケムニッツは移民なしでは「崩壊」してしまうと付け加えた。例えば病院の従業員の40%は外国人だという。