0001きつねうどん ★
2024/04/26(金) 06:45:43.17ID:UbA/itvGいわゆる“サメ映画”の珍走により、さらに生物ホラー/スリラーの枠が広がっている昨今。変化球アニマル・スリラー『コカイン・ベア』がスマッシュヒットを記録したことも記憶に新しいが、この春、日本の劇場に登場するのが、その名も『キラー・ナマケモノ』だ。
原題は『SLOTHERHOUSE』(Sloth=ナマケモノ)で、これは本来の“屠殺場”という意味に加えて、そのフォントから察するに『悪いけ』オマージュのカルト作『スローター・ハウス/13日の仏滅三隣亡』(1986年)をもじってもいるのだろう。
自分の糞で死ぬ…? ナマケモノの不思議な生態
基本的には温厚な生態で知られるナマケモノ。ほとんど動かず1日の大半を寝て過ごし、とても少食で体重も軽く、木を掴んでいるように見えるが大きな爪でぶら下がっているだけ、という知れば知るほど奇妙な生き物だ。そんなナマケモノの死因の大半は、週に1回程度の排泄時に肉食動物に襲われることだという。しかも古代のナマケモノの祖先は、溜まりに溜まった自らの糞の上で(菌とか色んな理由で)フン死していたという調査結果もあるというから、つくづく不思議な生物である。
そのスローな生き物が、なぜ“キラー”になるのか? 過去にナマケモノに襲われた(噛まれた/引っ掻かれた)という事例はあるものの、死者が出たという話は聞いたことがない。
映画冒頭、本作の“主演”であるナマケモノはパナマの密林で暮らしていたところ、獰猛なワニに襲われるもなんとか生き延びたようだ。しかし、油断したところを密猟者が麻酔銃によって捕獲。やっぱりナマケモノはトロいんだな……と思いきや、川面にプカリと浮かび上がった巨大ワニの腹部には、大きな“3つの爪痕”が残されていて――。
女子大生の承認欲求が死体の山を築く
舞台は変わってアメリカ。SNSの反応に一喜一憂するベタな、もとい今どきのリアルな若者たち。主人公エミリーもそんなうわべだけの人付き合いに翻弄されていたが、あるときショッピングモールでエキゾチック・アニマル密売ヤーと出会ったことから、フォロワー増のためにナマケモノを飼うことに……。こうしてナマケモノはまんまとエミリーと共に女子寮で暮らすことになり、アルファと名付けられる(ちなみにアルファは雌らしい)。
本作はソロリティ(女子大生の社交クラブ)におけるゴタゴタ、つまりスクールカーストものでもあり、序盤で見せるステータスウィンドウ付きキャラ説明によって、ある程度“フラグ”も立ててくれる親切設計。SNS時代らしいポップアップ演出を交えつつ、青春ドラマよろしくエミリーの会長選の行方と平行で、アルファの凶行が描かれていく。
なお親友のマディソンは劇中ほとんど唯一の良識人で、エキゾアニマルを飼うことには反対派。このあたりが中盤以降のフックになって……と思いきや、あっさりと予想を裏切ってくるあたりもニクい。この子には生き残ってほしいな、という観客の願いが届くかどうかは観てのお楽しみということで。
そのナマケモノとの“自撮り”は、人生で最後の1枚になる
とにかく“嫌な予感”が秒単位で積み重ねられていく本作。過去の名作へのオマージュらしき描写も、やっているのがナマケモノなのでシュールさが半端じゃない。しかし白眉は、飽きるスキを与えない驚異的なテンポの良さだ。よくあるツッコみを回避したいがための、なんとか辻褄を合わせるための回り道みたいなものは一切なく、ナマケモノがバッタバッタと人間を殺し、女子がキャーキャー騒ぐ様子を矢継ぎ早に見せてくれる。