アルトゥニアンコーチが巻き込まれたハプニング

 ところが翌日のフリーでは、思いがけないハプニングが待っていた。コーチのラファエル・アルトゥニアンが、会場で設置されていたバブルの外に出てしまい、クレデンシャルをはく奪されたのである。

 これは日本の関係者にとっても他人事ではないので、少し詳しく説明する。

 新型コロナウイルスのパンデミック下での大会開催条件は、各国の政府と運営する連盟によって異なっている。アメリカではPCR検査の陰性証明書とワクチンパスポート、マスク着用のみだった。だが政府の規制がより厳しいカナダでは徹底したバブル方式が敷かれ、関係者はオフィシャルホテルと会場の中でも決められた区域内のバブルの中に隔離されていた。

 だが会場内でどこがバブルの境界線なのか明確に表示されていなかったため、アルトゥニアンコーチは意図しないままにバブルの外に出てしまったのである。

 ロシア人ジャーナリスト、エレナ・ヴァイセココフスカヤによると、アルトゥニアンは男子SP後にホテルに戻ろうとしたら、知り合いのアイスダンスコーチに、自分の生徒の演技を見て意見をもらえないかと頼まれた。そこで階段を上って観客席へ行き、演技を見た後に再びホテルに戻ろうとしたところ運営関係者が来て、彼はバブルの外にいることを告げられたのだという。

 バブルの境界線のところに警備員もおらず、張り紙もされていなかった不手際を運営側は認め、すぐにサインが掲げられた。

「大変残念な状況でできれば避けたかったのですが、一度バブルの外に出てしまった人物を中に戻すということは、このプロトコールの意義が失われてしまうので、できないのです」とカナダ連盟広報のアマンダ・スペロニは説明する。

 アルトゥニアンコーチは元に戻ることが許されずに、クレデンシャルパスのはく奪という結果になった。チェンはコーチがボード際に付き添うことができないまま、フリーに赴くことになったのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0eff4e9db29dc01f3e440510be746704657f5651