【羽生結弦4回転アクセルの扉】白井健三からのメッセージ(2) これは新技『ハニュウ・ジャンプ』

野口美恵スポーツライター
1/18(火) 10:31
https://news.yahoo.co.jp/byline/noguchiyoshie/20220118-00277908

羽生結弦が挑む、史上初の4回転半。“回転の真実”に肉薄していく羽生選手の姿を、おなじ回転(ひねり)の第一人者である体操の白井健三さんが注目している。「新技」を作るという視点から、白井さんが4回転アクセルについて語る、第2回目。

「新技のためには、手段を選ばずセオリーを捨てる」

4回転アクセルも、既存の技の延長ではない

――第1回目では、白井さんが「ひねり=横回転」の視点から、4回転アクセルを考えてみました。第2回目は「新技を作る」という視点で語っていただきたいと思います。

新技を作るというのは、体操では大きな課題となる部分です。技の難度が上がっていくと、「ここから先は普通の人じゃ無理」となる。「普通の人ってなに?」ということ。それを超えて行けるかが大事なんです。「普通」の延長では成功しません。羽生選手にとっても、4回転アクセルという大きな壁がある。4回転ルッツまでは幼少期から積んできたことの上にあったとしても、4回転アクセルは違う土台を作るという作業になってくるのではないかな、と思って見ています。

――白井さんは、これまでに6つ「シライ」の名が付いた新技を成功させています。新技を作っていくというのは、どんな感覚でしたか?

例えば跳馬になりますが、リオデジャネイロ五輪で「3回半ひねり」を成功させました。やはりオリンピックですし、自分の限界となる最も難度の高い技を披露したかったんですね。従来からあった技は、後方への3回ひねり(後方への縦回転+横の3回転)です。まず台に手を突いたら後方への縦回転をつけて、そのあとひねる(横回転)という意識で行います。跳馬としてはそれがセオリーなんです。でも、3回転半するには、それじゃ間に合わない。ひねり(横回転)を優先させないといけない。それで、セオリーを捨てました。