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白井氏の「4回半ひねり」やロシア女子は「回転」をとる

――その「新たな理論」を導き出すために、羽生選手は回転の要素を細分化し、思考錯誤しています。いまは「回転軸を作る」ことと「思いきり回す」ことを別々に取り組んで、その2つを合わせたら4回転半まわれる、というアプローチで取り組んでいるそうです。

体操のひねり(回転)も同じです。「軸を作って跳ぼう」と思っている時点で、自分のパワーの7割しか出ません。たぶん羽生選手も「思い切り跳びたいけど、軸を作るためにはこのくらいの跳び方で調整しておかないと」という気持ちですよね。僕の場合は、4回半ひねりのときは、「軸を作る」という意識をいったん捨てて、空中に出てからのことを考えずに10割の力で回していく、という意識に変えました。

――4回転アクセルは前に飛び出てから回転するので、空中で軸を移動させるタイムロスは、どうしても逃れられない気がします。

羽生選手のアクセルを見ると、右脚を振り上げるモーションが大きいですよね。高さを出そうとしていると思います。フィギュアスケートの特性上、どうしても大きくなってしまうなら仕方ないけれど、わざと大きくしているなら、もうちょっと高さより回転のほうを重視してもいいのではないかな、と思います。もちろん体操でのアイデアなので、試してみて変だったらすぐにやめたほうが良いですが。

――回転数を増やすのに、「高さ」か「回転速度」かという話ですね。

もともと、選手ごとの跳び方の違いには、注目しているんです。「高さ」への比重と「回転」への比重が、人によって違います。ロシアの女子選手は、右足を振り上げませんし、両手も手を前に振り出してない。腕の使い方を見ていると、高さよりも回転のほうに比重を置いた跳び方です。彼女達を見ると、「両手を、下から前に出さなければならない」という概念はなくなります。そうならば、踏み切った瞬間に、開いていた左肩に右肩を追い付かせる、という腕の使い方もアリになってくるのかなと思います。