>>203
――ロシアの女子では、手を上げて4回転やトリプルアクセルを跳ぶ選手も現れています。軸が細くなるので、とても回転速度が速いです。

空中で手を上げてるってことは、もうセオリーは全く関係ないですよね。とにかく、速く回転できれば良いわけです。体操で新しい技を作ってきた身としては、他の人の意見を聞きすぎると分からなくなっていくので、自分の感覚を一番大事にしつつ、ちょっとでも良いなというものは取り入れていけば良いと思います。捨てるもの、取り入れるものを、羽生選手ならはっきり決めていけますから。羽生選手はいま北京五輪を控えて、プログラムの完成度や細かい部分を詰めていく、思い詰めやすい時期。だから遊び半分で、手の使い方を変えてみたり、今までとまったく違う感覚のジャンプをやってみる、という程度の気持ちもアリだと思います。たとえばクワドアクセルで両手上げていたら、かっこよすぎますよね(笑)

――目から鱗の話ばかりでした。羽生選手がクワドアクセルの扉を開けたとき、どんな世界が見えるのか楽しみになってきました。

新技をやるには、決断する勇気が必要です。それを背負えるのは羽生選手にしかない力です。技術の進化というのはシンプルなことで、羽生選手は「4回転5種類目までできたなら、なんで次をやらないの」という考えのはず。「4回転半は無理だろう」なんて言う資格は、誰にもありません。ぼくは絶対に、羽生選手ならできると思って見ています。