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 12月の全日本選手権では、4回転アクセルは入れず、パーフェクトの演技で合計319・36点、5年ぶり5度目の優勝を果たした。五輪三連覇が現実味を帯びてくるような得点と内容だ。しかし会見で彼の口から出た言葉は、やはり4回転アクセルへのこだわりだった。

「とにかく4回転半を試合で降りたいです。そこが何度も言ってるように最終目標です。自分がイメージしているアクセルの幻想と、自分の身体とのギャップを早く埋めつつ、最大限の努力をしていきたいです」

 21年3月の世界選手権までは、4回転アクセルの練習に没頭した。

「かなり死ぬ気でやっていたので、他のジャンプは練習しないでアクセルだけ2時間という日もありました」

 成功者のいない4回転アクセルは、どれが正解の技術か分からない。高さ、飛距離、回転速度など、あらゆる条件を調整しながら、トライし続けた。

「本来フィギュアスケートでは考えられなかった器械体操、陸上などいろいろな理論を取り入れました。体操の内村航平さんの感覚を参考にしたり。4回転半は大きな壁なので、どうやって回転数を増やしていくのか、ジャンプの高さ、滞空時間を伸ばして行くのかを考えました。あと8分の1回転まわれば着氷できます」

 3月までには、一見して足が太くなり、背中の厚みが増すほど筋力もついた。

「体重は増えました。ウエイトをやったわけではなく4回転半を練習しているうちに、遠心力や慣性をとりこむための筋肉がついてきたなと思います」