俺は最近中村の事を見ると、胸が張り裂けそうになるんだ。
きっとこの感情はよく知ってるもので、でもそうとは認めたくない自分もいた。
何故なら彼は、男でまた自分も男だからだ。

もう長い事一緒に仕事をしてきたし、今更気を使うまでもない同業者。
それに俺の所属する事務所に後輩として入って来たからにはより以前よりも身近な存在になった。

「櫻井さん」

すぐに彼と分かる硬質で、凛とした声をこの世界に響かせる。
俺はその声にいつも切ない気持ちになってしまう。

「どうした中村?」

何でもないと、そんな顔をしてその声の主に返事をした。
40年以上も生きてきて身に付いたのは感情を隠す事や偽る事。
そしてその事に罪悪感すら覚えなくなった事。

「今日の収録終わったらドライブに行きません?帰り、送りますよ」
「なんだ中村。また車運転したいのか」
「まあそんな感じですね。でも俺人見知りだから、あんま知らない奴は苦手で」
「そんなの誰だってそうだよ。でもこんなおじさんナンパするなんてお前も大概寂しい奴だな」
「それ言ったら俺もおじさんですから。じゃあ20時に」
「はいはい。気が向いたらな」

彼が屈託のない笑顔を向けてくれることが嬉しくて俺は思わず口元がほころんだ。
大丈夫。見られていない。
そう、俺は最近ちょっとおかしい。
どうにも気持ちがダダ漏れになることが増えたかもしれない。
まだ中村の前で取り繕う事は出来るんだけど、彼がその場を去ってからは一気に気が抜ける。
ああ、俺は何事もなく色んな事をやり過ごすことが出来たのに。
でも今の俺も決して嫌いじゃないんだ。
そう、ちょっとだけこの後の仕事が楽しくなりそうだ。
はやる気持ちを抑えながら俺は仕事へ気持ちを切り替えた。


ささっとだけど書いてみたおおお
もう寝るから続きは今度