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 「フィギュアって毎年毎年、新しいものをやる。長くて2年。それって真理なのかなって。伝統芸能は、語り継がれるものは何回も演じられる。バレエもオペラもそう。『SEIMEI』も特にそう。そういう道を究めるのもいいなって」

 ワインもチーズも「たしなまないです」と笑いながら、代名詞「SEIMEI」の熟成をこう説明した。

 「前より感情が緩やかになった。前は殺伐としていて、結界を張って何かと闘って、はね返す! みたいな。それが、とがっていないというか達観した。映画『陰陽師(おんみょうじ)』の中の安倍晴明に、ちょっと近づいてきたのかなって感じが、しなくもない」

 このシーズンはグランプリ(GP)ファイナルでも敗れ「内発的動機が全くなくなった」と心配な言葉も発していたが、4大陸で初優勝。平昌後の心残りだった6冠目を手にし「続けて良かった」と安心させた。今後のアイスショーなど新たな挑戦で示すだろう方向性も、おぼろげに見えた。

 大会後、新型コロナが猛威を振るう。3月の世界選手権(カナダ)は59年ぶり中止。「暗闇の底に落ちていく」次シーズンが羽生を待ち受けていた。(敬称略)【20年~担当=木下淳】

 ◆スーパースラム ジュニアの世界選手権とGPファイナル、シニアの五輪、世界選手権、GPファイナル、4大陸選手権(欧州勢は欧州選手権)を全て制した6冠の栄誉を表す。女子は金妍兒(キム・ヨナ=韓国)とアリーナ・ザギトワ(ロシア)が達成。男子は羽生が初めて完成させた。