公判で示された証拠などによると、松本被告は大学中退後、一時期は自宅の酒屋を手伝ったこともあったが、無職のまま引きこもりがちな生活を30年以上続けていた。両親の食事の準備や風呂掃除などはしていたが、両親の年金や貯金で生活し、小遣いを毎月もらっていた。好きな漫画本を読んだり、アニメや特撮のDVDを見たりすることが唯一の楽しみだった。

 検察側は冒頭陳述で、松本被告がDVDを鑑賞中に父博和さん(当時88歳)がトイレの介助のため、1~2時間おきに被告を3回呼ぶなどしたため「何度も自分の時間を邪魔されて我慢できず、怒りが爆発した」と指摘。博和さんの首を絞め、様子を目撃していた母満喜枝さん(同87歳)も口封じで首を絞め、廃業していた自宅の酒屋にあった業務用冷蔵庫に2人を運び入れたと主張した。

 松本被告は被告人質問で「約35年間、母親以外とほとんど会話をしていない」と明かした。博和さんは大学中退を叱責されるなどして苦手だったといい、満喜枝さんの殺害には「今思えばやり過ぎだった」と振り返った。弁護側は「被告は孤独を好むような障害があり、慎重に量刑を考えてほしい」と訴えた。