>>261
■国際ジャッジ資格保持者 杉田秀男
2021全日本SPについて

羽生は、すごい。特にSP。なんて言えばいいんですかね。彼の世界は、想像を超えましたね。
彼のいい滑りは、何回見てもすごいな、すごいな、と見てきました。今まで以上に、今回のSPはすごかった。
音楽に合わせて滑るんじゃなくて、彼の滑りの中に音楽がある感じでした。
手の動き、首の動き、一挙一動、全て音楽とシンクロしていましたよね。
5コンポ(演技構成点)の中で、満点がついているものがありました。

私は、会場で演技を見ながらメモをして採点しています。過去に、僕は10点をつけたことはないですよ。
しかし羽生のあのSPは、「演技力」「構成力」「音楽の解釈」という下の三つの項目は間違いなく10点だったと思います。
なぜ10点なのか、説明しましょう。
エレメンツがうまくいっただけでなく、滑りの中でエレメンツと音楽が完全にシンクロしていました。
引き込まれる、なんてもんじゃない。言いようがないくらい興奮しましたよ。

私は十数年、世界選手権でも五輪でもジャッジをやってきました。海外の選手も数多く見てきましたが、あれくらい感動したのは初めてです。
シングルで10点なんて。こんなSPを見ることができて幸せだった。なかなか見られない演技ですよ。そこまで彼は到達している。うれしかったですね。

4回転ジャンプが入ったハードなプログラムになると、跳ぶための準備動作、予備動作がある程度必要になります。
そこの部分は、音楽とシンクロするのは簡単ではありません。
どうしても体の動きが止まってしまうこともあるので、リズムがないこともよくある。それが普通です。
でも羽生は、それがまるきりないんです! 
だから、10点が出たんだと思います。私も、メモをしながら、「10点だ!」と思いました。