被害への向き合い方という点では、もう一つ見過ごせない出来事があった。先月末の英BBCの報道で、旧会社の東山紀之社長は被害者への中傷について問われ、「言論の自由もあると思う」「誹謗(ひぼう)中傷のライン引きは難しい」と述べた。被害を打ち明け補償を申請することを考えている人を、尻込みさせる発言だ。

 同社は昨年も「虚偽の証言をする人がいる」という情報をサイトに載せ、二次加害を生む恐れが指摘された。性被害への対応についての知見が組織に欠けていると自覚し、補う方策を考えてほしい。

 再出発で、なし崩しに問題が終わったことにしてはならない。被害を救済し、かつ今後起きぬよう、人権状況を不断に点検していくためには、国連人権理事会の作業部会が昨夏に指摘したように、政府やメディアを含む取引先企業が果たすべき役割は大きい。