読者「歴史知らないことにショック」 富士山の麓に米軍基地 沖縄に移転 山梨日日新聞が連載「Fujiと沖縄」 差別投稿やヘイト取材
2022年4月9日
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/940103

山梨日日新聞(甲府市)は1月から、1面で連載「Fujiと沖縄〜本土復帰50年」を展開している。
企画を担当する前島文彦報道部長(44)が4日から沖縄を訪れ、復帰50年を迎える沖縄の米軍基地の実態や会員制交流サイト(SNS)での沖縄に対する差別的な投稿、街頭でのヘイトスピーチを取材している。
沖縄から遠く離れた山梨の地元紙が、なぜ報じるのか−。「かつて富士山の麓に米軍基地があり、それが沖縄に移ったことを知らない人が多い。日米安保の在り方を議論する前に事実を伝えたい」。連載の意義を、こう語る。

山梨県の陸上自衛隊北富士演習場にあった米軍基地「キャンプ・マックネア」の部隊は、「富士を撃つな」をスローガンにした地元の反対運動を受けて1957年までに、米軍統治下だった沖縄に移ってきた。
連載のプロローグでは、山梨県出身で沖縄に住む音楽家の宮沢和史さん(56)が「『山梨は沖縄に借りがある』という事実を知っておかなくてはならない」と語っている。

第1部「米軍がいた11年」は、山梨で起きた米軍関係の事件や事故を取り上げている。

小学6年で米軍トラックにはねられた男性には一銭の補償もなかった。演習場の不発弾爆発事故で命を落とした少年の遺族は「風化させたくない」と訴える。
理由もなく米兵に殴り殺された男性の遺族は「混乱期のやむを得ない事件と割り切れない」。埋もれた声を掘り起こし、山梨にあった不条理を明らかにした。

基地周辺は米兵相手のビアホールを営む家、米兵を接待する女性に部屋を貸す家などで栄え、1ドル紙幣が飛び交う「ワンダラー時代」と呼ばれる好景気があったとも報じる。
米軍の撤退で衰退したが、企業の保養地や観光地として息を吹き返し「米軍がいた負の歴史」は、記憶から薄れていったという。

第2部は、神奈川や岐阜などで起きた米軍関係の事件事故も報道。第3部は米軍機の低空飛行や実弾砲撃訓練をテーマに、日米地位協定の問題点を伝える。
山梨日日新聞は7月1日が創刊150年。前島さんは「連載に『沖縄』と付けるのはおこがましいと思ったが、沖縄以外でも米軍基地の負担に苦労した歴史があるのに、
それを忘れるどころか沖縄を攻撃の対象にし、事実をねじ曲げようとしている。人ごとではいられないと考えた」と話す。