市民らが憩う森林公園を整備しようと、大阪府交野市が約3億円で買収した市有地が、複数の住民に約25年にわたり野菜畑として無料で利用されていることが13日、分かった。
現地の草刈りを市から依頼された住民が“無断転用”したのがきっかけで、市も目的外利用と知りながら事実上黙認してきた。
市は3月の市議会で追及を受け、畑としての利用を見直す方針だが、野菜を長年育ててきた住民らは突然の方針転換に困惑している。

 市は昭和60年、「交野市民創造の森整備構想」と銘打ち、同市の星田地区で、甲子園球場約4・5個分にあたる約18万平方メートルを、自然観察やスポーツが楽しめる森林公園として整備することを決定。
60年以降、周辺の土地約9万2千平方メートルを計約29億円で買収したが、現在まで計画はほとんど進んでいない。

 市関係者や住民によると、買収開始から数年がたった約25年前、買収地の一部約6500平方メートルで、市から草刈りなどの管理を依頼された住民らが畑を耕し始めた。
現在は周辺住民35〜40人が畑を利用し、ハクサイやサニーレタス、ジャガイモ、エンドウマメなどを栽培。出荷はせず、各家庭で個人消費しているという。
市は一帯の土地の買収に約3億円を投じたが、これまで住民に賃料などを一切要求してこなかった。

 今年の3月議会でこの問題が取り上げられ、市は現地調査することを決めた。
市環境部は産経新聞の取材に「住民に現地の草刈りを任せたが、いつの間にか畑になっていた。具体的な経緯は把握できていない」と説明。
畑として利用しているのを知りながら住民に注意することもなかったといい、目的外利用を半ば黙認していた格好だ。
一方、「市有地で得られた収穫物を個人消費しているのは問題」とし、今後は管理方法などを見直す方針という。

 これに対し、市から市有地の管理を依頼され、自身も約25年前からダイコンやキュウリ、トマトなどを育てているという無職男性(79)は、市の突然の方針転換に戸惑いを隠せない。
男性は「草刈りなどの管理を任された代わりに、住民で畑をつくった。(業者に依頼すれば年間)100万円以上かかる草刈りをボランティアでやっている。
畑をなくすというなら、具体的な整備計画を示してほしい」と憤る。70代の女性は「健康管理の目的で野菜を作ってきた。急に畑がなくなるのは…」と困惑する。

 市の担当者は今後の方針について「明言はできない」としながらも、「住民が納得できる形で整備を進めたい」と話している。

http://www.sankei.com/west/news/160413/wst1604130071-n1.html