https://mainichi.jp/articles/20211106/k00/00m/040/236000c

毎日新聞 2021/11/6 18:20(最終更新 11/6 19:52) 836文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2021/10/31/20211031k0000m040222000p/9.jpg
火災のあった列車から脱出する乗客ら=東京都調布市の京王線国領駅で2021年10月31日午後8時ごろ(@siz33さん提供)

 京王線の事件では多くの乗客が窓から避難し難を逃れたが、必ずしも窓が開閉する車両ばかりではない。窓が開いたとしても鉄道事業者は窓からの避難を想定しておらず、列車内で事件や事故に遭遇したとしても「最終手段」と考えた方が良さそうだ。

 東京、大阪、福岡に拠点を置くJR各社や主要私鉄などに窓の開閉構造について取材したところ、JR東日本は「新幹線や特急、普通電車のグリーン車は窓が開かないが、首都圏の在来線は各車両の一部が上下に最大35〜45センチ程度開くようになっている」と答えた。



 東武鉄道、近畿日本鉄道、西日本鉄道は「窓が開く車両はあるが、特急など一部は開かない」、東京メトロ、東急電鉄、阪神電鉄は「車両のどこかの窓は開くようになっている」と回答。ただ、いずれの鉄道事業者も「窓からの避難は危険で想定していない」としている。福岡市地下鉄は「すべての窓が開かない構造」という。

 一方、京王線の事件で一部の乗客が使った非常用ドアコックについても各事業者の担当者は「乗務員が操作するか、乗務員の指示に従ってもらうことが基本」と口をそろえた。



 では、今回のような事件に鉄道事業者はどう備えればいいのか。鉄道の安全に詳しい関西大の安部誠治教授(交通政策論)は「利用者が多い在来線や私鉄で刃物などの手荷物検査は現実的でなく、対応は非常に難しい」と前置きした上で、やはり車両内の防犯カメラ設置を真っ先に挙げた。

 もっとも、安部教授も「すべての車両に装備するにはかなりの時間がかかるだろう」という立場だ。次善の策として、いざという時に乗客が混乱しないように、事業者ごとに作成している避難マニュアルを統一し、避難方法や非常通報装置の場所などを日ごろから周知するよう求めた。同様の事件が頻発するようならば、各事業者による警備員の配置や、都道府県警との連携も検討課題になると指摘。「被害を軽減するため鉄道事業者、乗客双方に何ができるか議論を進めることが求められる」と強調した。【山口桂子、吉住遊】