https://mainichi.jp/articles/20211213/k00/00m/040/104000c

毎日新聞 2021/12/13 18:32(最終更新 12/13 18:33) 1114文字




https://cdn.mainichi.jp/vol1/2021/12/13/20211213k0000m040114000p/9.jpg
土砂投入から3年を迎える辺野古沿岸部=沖縄県名護市で2021年11月20日、本社機「希望」から

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画を巡り、工事の設計変更を県が不承認としたことに対し、防衛省沖縄防衛局が国土交通相に起こした審査請求の内容が判明した。県が埋め立て予定海域で見つかった軟弱地盤の調査が「不十分だ」などとして不承認としたことについて、防衛省は専門家の意見などを基に「適正だ」と主張したうえで、「埋め立て事業の阻止が目的で、行政権の著しい乱用だ」と批判している。

 防衛省は2020年4月、軟弱地盤の改良工事が必要になったとして設計変更を承認するよう県に申請した。玉城(たまき)デニー知事は21年11月、公有水面埋立法の基準に沿って審査した結果、「基準に適合しない」として不承認を通知。これに対し、防衛省は12月7日、行政不服審査法に基づき、国交相に審査請求し、知事の処分を取り消す裁決を求めた。



 防衛省は審査請求の詳細を明らかにしていないが、「不承認処分は違法、不当であることは明らかだ」と主張。そのうえで、軟弱地盤が海面下約90メートルに及ぶとされる最深地点の地層について、県が「防衛省は最深地点の調査をせず、周辺の3地点から強度を類推している。地盤の性質を適切に考慮しているとは言いがたい」と指摘していることに反論。有識者会議の意見も得たとして「調査地点の設定は適正で、最深地点の地層の強度も周辺3地点の調査結果から適切に設定している」と強調している。

https://cdn.mainichi.jp/vol1/2021/12/13/20211213k0000m040113000p/9.jpg
辺野古設計変更を巡る沖縄県と防衛省の主張

 また、地盤改良工事が絶滅危惧種ジュゴンに与える影響について、県が「適切な予測が行われていない」と指摘したのに対し、防衛省は「水中音を測定し、予測を超える場合は対策を検討する。ジュゴンには特に配慮して影響の予測・評価を行っている」と主張した。



 さらに、県が「工事の完了が不確実で、普天間飛行場の危険性の早期除去にはつながらない」として埋め立ての必要性を否定した点については、防衛省は「普天間飛行場の危険性の除去が喫緊の課題だという事情を前提に認められた代替施設の建設の必要性は何ら変わっていない。埋め立ての必要性は当初の承認の場面で審査されるべき事項で、設計変更時に審査される理由はない」とした。

 審査請求で防衛省は県の審査が標準処理期間を超えて、1年7カ月かかったことを問題視。「ことさらに処分を遅延させ、公正に法適用を行った判断にはみえない。不承認処分は法令の趣旨・目的を逸脱して、埋め立て事業を阻止することを目的としたものだ。行政権の著しい乱用で、極めて重大な違法と言わざるをえない」と訴えた。



 こうした防衛省の主張に対し、県は国交相に弁明書を提出して反論する方針で、国交相の裁決には数カ月かかるとみられている。【遠藤孝康】