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毎日新聞 2022/2/3 09:56(最終更新 2/3 09:57) 1492文字




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不登校になった男児の父親は担任教師の暴言や学校の対応が不適切だったと訴える=盛岡市内で2022年1月5日、日向米華撮影

 盛岡市内の小学1年の男児が同級生からの嫌がらせや担任教師への恐怖心から不登校になっている。期待に胸を膨らませて入学したが登校できたのは数カ月ほどで、父親は家庭訪問もせず解決に動いてくれなかった学校側の対応に不信感を募らせる。市内の小学校の不登校児童数は増加の一途で2020年度は103人に上った。低学年では状況を自分で説明することが難しい場合もあり、学校の初期対応が重要になる。【日向米華】

 男児は昨年6月中旬、学校に行けなくなった。父親(43)が理由を尋ねると、同級生にからかわれるなどの嫌がらせを受け、「担任の先生が怖い」と打ち明けた。詳しい状況が分からず、事実なら改善してもらいたいと校長に男児の訴えを伝えたが、学校側から報告はなく、この間に家庭訪問や担任からの連絡は一切なかったという。



 男児は7月に父親が付き添うことで登校を再開。ところが父親が教室で目にしたのは、女性の担任教師が教室から児童を無理やり連れ出して廊下に立たせたり、「特別支援学校に行きなさい」「保育園、幼稚園に戻りなさい」などと不適切な発言で叱責したりする姿だった。父親は「小学生になったばかりの幼い子に取る対応ではない」と憤ったが、担任の言動に変化はなかったという。

 同級生からけがをさせられる行為も続き、10月中旬に再び不登校となり今も通えていない。学校側から納得のいく説明はなく、父親が求めるまで宿題や連絡事項のプリントなども届けられなかった。父親は「学校は早い段階で適切な対応をすべきだった」と悔しさを募らせる。



 毎日新聞は1月に学校と市教育委員会に男児への対応について取材したが、「個別事案のため」として明確な回答は得られなかった。しかし同月、担任と校長は指導や管理監督、保護者対応が不適切だったとして市教委から調査を受けていることが判明。2人は研修を受けるため学校現場から離れている。

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岩手県内の不登校児童・生徒数の推移

 文部科学省が発表した2020年度の全国調査によると、小中学校での不登校児童・生徒数は12年度から8年連続で増加し、20年度は19万6127人と過去最多となった。県内でも12年度は849人だったが20年度は1372人にまで増えた。



 増加する不登校児童や生徒に対応するため、盛岡市は昨年9月に「不登校未然防止 初期対応マニュアル」を作成。欠席1日目で電話連絡▽連続欠席2日目で家庭訪問▽3日目で子供の状況を校内で共有し、支援が必要な場合は支援策を検討――などと示す。

 男児の小学校でも、いじめは児童が心身の苦痛を感じている場合と定義し、教職員は児童の安心と安全を最優先に「居場所づくり」に取り組むなどとする基本方針を定めていた。しかし、マニュアルも方針も男児の事案には生かされなかった。



 市教委の担当者はマニュアルについて「各学校に共有しているが、あくまでマニュアル。実際には不登校の実態に応じて学校の判断で対応することになる」と話し、対策の徹底には課題が残る。

「外部機関に相談を」大塚耕太郎・岩手医科大教授(精神医学)
 学校は組織として支援をすることが大事だが、それが望めない場合は外部機関に相談してほしい。児童相談所や各自治体の相談窓口、NPO法人など学校以外の相談機関はさまざま存在する。学校での対応が不適切だったり解決に結びつかなかったりした時は、学校以外にうまく頼っていくことも必要だ。

 また、子供からのSOSの発信に注視しがちだが、悩みを言葉にできない子もいる。何よりも大事なのは教師の歩み寄りのサポートだ。男児の事案では、不登校になっている時点で深刻な事態であることを学校側は認識すべきだった。