流通大手イオングループの「イオン九州」(本社・福岡市)が、熊本県内などのスーパーのパート従業員を法定の地域別最低賃金より低い時給で募集していたことが、4日までに熊本日日新聞の調べで分かった。イオン九州の採用担当幹部は、福岡地方最低賃金審議会の委員を務めている。

 募集していたのは、イオン九州が運営するスーパー「マックスバリュ」の熊本県内の2店舗と大分県内の「イオン」の1店舗。

 このうち合志市の店舗では時給793円、大分県由布市の店舗では792円と、それぞれレジスタッフなどとして、熊本県(821円)と大分県(822円)の現行最賃額を下回る金額を改定発効(熊本は2021年10月1日、大分は同6日)後に提示。「イオン九州」の公式ホームページの採用サイトで募集し、問い合わせ先を本社の人事教育部としていた。

 また、熊本市内の店舗では、店内掲示のポスターで20年度の熊本県の最賃額793円も下回る時給790円を示し、夜間担当スタッフを募集していた。

 合志市と熊本市の店舗は高校生対象の募集としていたが、地域別最賃は原則全ての労働者に適用されるもので、高校生も除外されない。3店舗の募集はいずれも、熊日からの通知を受けた熊本労働基準監督署などが指導して、既に時給額などを訂正した。

 イオン九州の人事教育部長は、厚生労働省福岡労働局長からの任命で福岡地方最賃審議会の使用者代表委員を務め、福岡県の最賃額決定などに携わっている。またイオン九州の労組副委員長も21年度、審議会の百貨店・総合スーパー専門部会の労働者代表委員を務めていた。

 人事教育部は「時給を掲示するシステムなどの更新がきちんとできておらず、チェックからも漏れていたもので、大変申し訳ない。再発防止に努める」と話している。

 一方、「最賃を下回る賃金で雇用した従業員がいなかったことは、過去にさかのぼって賃金台帳で確認し、労基署からも了解を得た」と説明。熊本労働局監督課は「任意の調査・指導であり、個別の内容については公表できない」としている。(泉潤、中原功一朗)

熊本日日新聞 | 2022年03月05日 07:55
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